斬られ役列伝・江見俊太郎編/長七郎江戸日記(第1部) 第110話:寺子屋ぎらい(制作/ユニオン映画 制作協力/東映太秦映像)

仕官を餌に釣った善良な浪人者の弱みに付け込んで人斬り稼業に引きずり込む坂部藩江戸家老・柴田監物役で登場する江見俊太郎名人。
ラス立ち終盤、ハイアングルからの撮影に切り替わってからのひと幕で名人芸を披露して下さいます。
長七郎(里見浩太朗)に追い立てられ、庭へと逃げる江見名人。
振り向いて構える江見名人。
福本清三氏を斬り捨てた長七郎に突きを繰り出す江見名人。
木谷邦臣氏→笹木俊志氏と斬り捨てた長七郎に斬りかかり・・・
胴を払われる江見名人。
斬られた瞬間、右手に刀を振り下ろす江見名人ですが・・・
わざわざ手首を返してから硬直・・・
そして滑るような足取りで後ずさる江見名人。
一度は地面に膝をつくものの、顔をあげ刀を構え直す江見名人。
渾身の力を振り絞って長七郎に斬りかかる江見名人。
二刀で胴を払われる江見名人。
「ぐぉぉぉっ」とくぐもった呻き声をあげて・・・
後ろにのけ反り・・・
地面へと・・・
倒れ込む・・・
江見名人。
クセの強いお芝居もさることながら、非常に美しい太刀捌きを持ち味とする名悪役の江見名人。長七郎シリーズにも多数出演されていますが、特に絶妙な立ち回りを演じられたのが本作ではないでしょうか。
斬られた瞬間に振り下ろした刀の切っ先を、手首を返して前方に向け直すのは、その後すばやく後ずさるための伏線ですかね。そのままでは刀が地面に触れそうで邪魔ですし、フォームも美しくない。
二度目に斬られた江見名人は、やや後ろにのけ反ったかと思うと躊躇なく地面に倒れ込みます。その際、左手一本で受け身を取っているだけなんですね。身体の固い役者さんが同じことをやるとケガをしそうですが、何なくやってのけています。さすが江見名人です。
この回の擬斗担当は上野隆三翁。福本氏、木谷氏、笹木氏という斬られ役の名手たちの連携プレーの中に、巧みに江見名人の手を組み込んでいます。それにしてもハイアングルから眺める里見氏の二刀流は、いつもながら本当に美しいですね。