斬られ役列伝・笹木俊志編/松平右近事件帳 第8話:夫婦のきずな(制作/六本木オフィス・ユニオン映画 制作協力/東映太秦映像)

材木商の上州屋(遠藤太津朗)や備前屋(森幹太)と結託、不正な入札を繰り返して私服を肥やす裏で、武蔵屋(和田浩治)の女房・お牧(金沢碧)を死に追いやった作事奉行・平田丹波守(川辺久造)の腹心・片桐某役で登場する笹木俊志名人。ラス立ち終盤、ハイアングルに切り替わってからの1シーンで大活躍なさいます。
正眼に構えた右近(里見浩太朗)が峰蘭太郎氏と対峙するところからシーンはスタート。峰氏の画面右隣が笹木名人。
「おのれぇ」と野太いかけ声をあげながら振りかぶる笹木名人。
すぐに右近に切っ先を突き付けられ笹木名人は後退し・・・
その隙に右近に斬りかかった1人が斬られて、残るは平田と峰氏、藤沢徹夫氏、泉好太郎氏、笹木名人の5人。
一瞬の静寂を挟んで斬りかかろうとした峰氏や藤沢氏を右近が牽制する隙に、「ぬぅぅぅ!」という野太いかけ声と共に中段に構え直す笹木名人。
再度、暫し間を置いた後、藤沢氏→峰氏→泉氏と続けざまに斬られます。その流れで右近に斬りかかり・・・
刃を上からはたかれる笹木名人。
同じく右近に一撃を躱された平田と共に、右近に対してトライアングル状に対峙する笹木名人。
横一文字から・・・
脇構えへと・・・
ゆっくり移行する笹木名人。
満を持して右近に斬りかかるも・・・
受け流しから・・・
背中に一太刀を浴び・・・
平田にも一太刀浴びせた右近に対して振り向きざまに・・・
もう一太刀、胴を払われる笹木名人。
刀を持った右手を下げて硬直後・・・
右手から地面に崩れ落ち・・・
仰向けに転がる・・・
笹木名人。
本作の疑斗担当は、松平右近シリーズを通じてメインを務められた上野隆三翁。終盤にはハイアングルからの撮影に切り替わり、特に腕のいいカラミを揃えて里見氏の華麗な立ち回りをじっくり見せてくれるのが、シリーズのラス立ちにおける定石でした。
そんななか、本作のラス立ちは、手の美しさ、多彩さ、カラミ役の絶妙な間合いの取り方を含め、右近シリーズを通じても五指に入る名シーンだと思います。
間合いを決めるのは連続する手のなかで初めに斬りかかるカラミ役になりますが、ここにひと癖交えて独特の間の置き方をモノにしているのが笹木名人。ヘタなカラミがやっても間延びするだけなのですが、笹木名人ともなると、いざ斬りかかるまでの所作や刀捌きに説得力があり、全く違和感を感じさせません。
緩急自在なテンポで展開されるこの素晴らしい立ち回りシーン、里見氏の華麗な太刀捌きばかりが目立ちますが、その裏でタイムテーブルを支配しているのは笹木名人と言っても言い過ぎではないと思います。
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