斬られ役列伝・木谷邦臣編/新・松平右近 第22話:右近の旅立ち(制作/ユニオン映画・六本木オフィス 制作協力/東映太秦映像)

盗人上がりの塩問屋・三州屋仁造(井上昭文)と結託して私服を肥やす勘定奉行・黒川左内(西山辰夫)の一家臣としてラス立ちに登場する木谷邦臣名人。手数は少な目ですが、立ち回りの展開上きわめて重要なパートを担当。カラミとして美味しいところを全部持って行ってしまう勢いです。
三州屋配下の浪人(壬生新太郎)、黒川の家臣(白井滋郎)、仁造と番頭の伊助(笹吾朗)の四名が斬られたところで、福本清三氏(左奥)と共に右近(里見浩太朗)の前に立ち塞がる木谷名人(右)。
右近に突きを繰り出す福本氏に続いて・・・
右近に斬りかかるものの・・・
刀を大きく払われ・・・
すぐさま低い体勢から・・・
突きを繰り出す木谷名人。
名人の突きがやり過ごされたところで、三州屋配下の浪人・長内(下元年世)が右近に斬りかかるのですが・・・
あっさり袈裟斬りを喰らって倒されます。そこへ・・・
障子越しに猛然と右近に斬りかかる・・・
木谷名人。
うひょーっ カッコよ過ぎる!(笑)
しかし誰がやっても、というわけではありません。見よ、この木谷名人の美しいフォーム!しっかりと腰を落として半身を引ききっているうえに、腕と刀が一体化しているかの如く直線状に連なっています。
その姿勢のまま右近と睨み合う木谷名人。
そこへ間合いを詰めて来た矢部義章氏演じる三人目の浪人者(手前)を牽制しつつ右近が立ち上がったところで・・・
右近に斬りかかるも・・・
くるりと時計回りに・・・
回転した右近に・・・
刃をガラ空きの胴にあてられてしまう木谷名人。
その姿勢のまま暫しの睨み合いの後・・・
胴から刀を引き抜かれるや・・・
すぐさま右近に斬りかかろうとするも・・・
今度は反対サイドから胴を払われる・・・
木谷名人。
個人的な意見としては「物凄く」矢部氏が邪魔なんですが(笑)、矢部氏の位置が演出サイドの狙い通りなのかどうかは分かりません。
さて、胴を払われ前傾姿勢で暫時硬直してから・・・
ゆっくり襖まで後退・・・
そこでも粘りを見せつつ仰け反りながら・・・
ゆっくり時間をかけてくずおれて行く木谷名人でした。
刀捌きにかけては他を寄せ付けない熟練の技を身に着けつつ、斬られた後の倒れ方まで美しい木谷名人。その倒れる姿をよく観察していると、立ち回り中は常に腰を低く落とすことで安定感を失わずに動き続ける木谷名人が、見た目に反して大変柔らかい膝をお持ちであることが分かります。
特に本作では、斬られてから倒れるまでの動作に溜めを挟んで、惚れ惚れするような独特のリズムで崩れ落ちて行くのですが、これはもう天性のセンスによるものとしか思えないですね。斬られ役の様式美をここまで突き詰められた役者さんは、古今東西通じて木谷名人以外におられないのではないかと思います。
本作の擬斗担当は上野隆三翁。それにしても、障子越しの袈裟斬りのカット、ぞくぞくする程カッコイイですね~。前後の刀の扱いを見ていても木谷名人の得物は竹光にしか見えないので、実際に木谷名人の一振りで障子が粉砕されたわけではなく、予め切れ目を入れたうえでタイミングを合わせて糸か何かで引っ張っているのだと思いますが、新右近シリーズのラストを飾るにふさわしい実に見事な大技でした。
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