時代劇名優一覧(女優編)・佐藤万理/長七郎江戸日記(第1部) 第44話:くの一有情(制作/ユニオン映画 制作協力/東映太秦映像)

時代劇名優一覧(女優編)・佐藤万理/長七郎江戸日記(第1部) 第44話:くの一有情(制作/ユニオン映画 制作協力/東映太秦映像)

将軍家世継ぎの竹千代が瀕死の床にあるなか、柳生の忍び軍団の組頭・文蔵(西沢利明)は、長七郎(里見浩太朗)と紀州家の接近を警戒するあまり長七郎の暗殺を画策。かつて長七郎を監視させるために柳生から放たれたにも関わらず今では長七郎と行動を共にしている六さんこと沢木兵庫(三田明)が邪魔になると判断し、まず兵庫を暗殺するために新たなくの一を放ちます。その、最後まで本名が分からないくの一を演じているのが佐藤万理さん。

童顔、小柄、そしてあどけない鼻声。そのかわいらしさから、武家娘よりは町民・農民の娘役によくキャスティングされていた万理さんですが、今回はひとまず、足抜けした女郎・お葉として六さんの前に登場。

時代劇名優一覧・佐藤万理

岡場所から追って来たヤクザ者(小船秋夫)たちから匿ってくれた六さんに、例の愛らしい鼻声で必死に訴える万理さん。

「お願いです!私を引き渡さないでください。あんな地獄へ戻るくらいなら死んだ方がマシです!」

時代劇名優一覧・佐藤万理

そして「お葉と申します」と名乗るなり・・・

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コホコホと咳こむ万理さん。

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「そのナリじゃ風邪引いちまうな」と優しい六さんに古着屋で着物を調達してもらって夢楽堂へ。

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その場に居合わせた同じく柳生のくの一・あかね(佳那明子)と目が合い、一瞬その表情が強張るお葉。

時代劇名優一覧・佐藤万理

万理さん、見た目が可愛いらしいだけではなくて、お芝居もイケてます。わざとらしさを一切感じさせない、見事なまでに自然な演技・・・

さて、お葉は長七郎たちを前に、岡場所を取り仕切る備前屋(長谷川弘)が、年季の明けた女郎だろうと痛めつけてこき使ったうえに最後は殺してしまう、と窮状を訴えます。

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そこへ夢楽堂の女主人・おれん(野川由美子)が握り飯を持って現れるのですが・・

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握り飯を恭しく両手にとって「あったかい・・」と呟くお葉。

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その様子を見ていた兵庫に「おめぇ・・みなし子だな?」と言い当てられ、驚きの表情を浮かべるお葉。

「どうして・・・どうして、そんな事が分かるんですか?」

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自分もみなし子だった事実を告白する兵庫を前に涙ぐむお葉。

「おんなじなんです・・・私も・・・六さんと同じように、お地蔵さんの握り飯を食べたことが・・・」

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万理さん、何気に滑舌がすごくいいんですね。台詞がスムーズに耳に入って来ます。地味ながらやはり名女優!

五郎太(篠塚勝)や宅兵衛(下川辰平)がもらい泣きしているところで急に激しく咳こむお葉。

口元にあてた手ぬぐいに血が。

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急きょ宅兵衛に医者を呼びに行かせる長七郎。やって来た医者は、お話の冒頭で兵庫を襲った柳生の刺客団のリーダー・三郎左(中田博久)が変装したニセモノ。お葉はもって余命半年しかなく「残された人生を心楽しく過ごさせてあげる事じゃ」などと言い残して去っていきます。

しかし寝所から姿を現したお葉は六さんに、いくらも生きられないことは分かってるが「悲しくなんかない」と言い張ります。

「あそこを逃げ出したおかげで六さんにも会えた。こんなに親切な方たちにも会えた・・・」

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鼻につくほどいじらしさ全開ですが、万理さんが演じると何か説得力がある・・・。

 

場面変わって、とある池のほとり。

冷たい風は身体に毒だ、と兵庫に夢楽堂へ帰るよう促されて振り返るお葉。

時代劇名優一覧・佐藤万理

この物憂げな表情もセクシーですね~。

風に吹かれていると病の毒が身体から消えていくようだ、などと言いながら、ふと遠くに見える山を見上げるお葉。

「まぁ、きれい・・・」

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もう小首をちょいと傾げただけで可愛らしい!

そして、自分の故郷でも山の上はもう雪だ、と呟いてから「どうせ死ぬなら、せめて故郷に帰って死にたい・・・」と兵庫の気を引くお葉。

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兵庫に「連れてってやるよ」「俺がお前にしてやれることは、それしかない」とまで言わせてしまうお葉ちゃん、恐るべきジジ殺し!

と、そこへ柳生の刺客の一団が現れて乱闘シーンに。ですが長七郎が現場に駆け付けるや否や、たちまち刺客たちは退散します。

自分が現れるとすぐに手を引く刺客たちの奇妙さに気付いた長七郎の様子に顔色を変えるお葉。

時代劇名優一覧・佐藤万理

可愛らしさとミステリアスな感じのギャップがまた何とも言えず素敵な万理さん。

 

さて、紀州家の重臣(幸田宗丸)から竹千代が瀕死の床にあることを初めて聞かされた長七郎は、柳生の策略と、お葉が柳生の放ったくの一であることに気付きます。

そうとも知らず、あかねに呼び出されて淡路町の荒寺に駆け付け、文蔵と対峙するお葉。

時代劇名優一覧・佐藤万理

かつて握り飯のエピソードを兵庫から聞いていた文蔵が、同じような作り話をさせれば兵庫は罠にかかると睨んだ自分の「狙いに狂いはなかった」と自画自賛しているところで「でも文蔵様」と切り出すお葉。

時代劇名優一覧・佐藤万理

何を思ったのか「裏切り者の兵庫に、あのような優しい心根があろうとは思ってもみませんでした」「あの男といた暫くの間、私は心が和みました」などと場にそぐわない頓珍漢なことを言い出すお葉。

時代劇名優一覧・佐藤万理

須らく、あかねに頬を一発張られてお説教をされる羽目になるお葉ちゃん・笑

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「我ら柳生には、そんな軟弱者はいらぬ!」と刀まで持ち出したあかねを制した文蔵に、「その女とて柳生くの一のはしくれ、そこまで性根は腐ってはおらぬ。そうだな?」と迫られるも、即答できないお葉。

時代劇名優一覧・佐藤万理

「主命とあらば、たとえ親兄弟でも殺す。それが、我ら柳生の掟だ」「わかるな?」と文蔵に諭され、今度は「はい」と力強く頷くお葉。

時代劇名優一覧・佐藤万理

あどけなさの残る顔つきに浮かぶクールな表情もまたいい!

兵庫だけでなく長七郎まで暗殺する手筈を文蔵に言いつけられ、その場を後にするのでした。

 

さて、川のほとりで話し込む長七郎と兵庫。柳生のしかけたカラクリに気付いた長七郎はすべてを兵庫に話します。そこへ慌てた素振りでやって来たお葉は、備前屋で今夜にも別の遊女が殺されてしまう、と訴えます。

兵庫に「おめぇ、誰に言われてそれを?」とツッコまれて答えに詰まるお葉ですが・・・

時代劇名優一覧・佐藤万理

長七郎は「よく知らせてくれたな」とお葉を追及することなく夢楽堂へと帰らせます。訝しがる兵庫に、お葉は九分九厘、柳生の手先だが「あと一厘残ってるじゃないか」と言ってのける長七郎なのでした。

一方、「できない・・・あの人たちを裏切るなんて・・・」と一人街を彷徨うお葉。

時代劇名優一覧・佐藤万理

意を決したように自分も備前屋へと駈けつけたお葉、備前屋の成敗に向かった長七郎たちの前に姿を現します。

「これは罠です!柳生はここであなたたちを殺そうとしてるんです!」

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そこへ手裏剣が飛んできてお葉の胸にグサリ。

時代劇名優一覧・佐藤万理

長七郎たちが備前屋一味に続いて柳生の刺客の一団と一通りの斬り合いを終えたところで、あかねが竹千代快方の一報を持って駆け付けたため、柳生の一団は引き上げます。

力尽きて倒れたお葉の元にいち早く駆け付けた兵庫に、「六さん・・・」と応えるお葉。

時代劇名優一覧・佐藤万理

お葉は自分が柳生のくの一であることを打ち明けようとしますが、兵庫は、命を投げ出して戻って来た心根の優しいお前がくの一であるはずがねぇ、と遮ります。

「ありがとう・・・六さん・・・」

時代劇名優一覧・佐藤万理

そして自分の故郷が甲州の伊沢であることと、本物のお葉(勇家寛子)の監禁場所を言い残して死んで行くのでした。

時代劇名優一覧・佐藤万理

 

佐藤万理さん、画面に登場するとついついそのお芝居に見入ってしまう女優さんの一人ですね。見た目に似合わず、お芝居に根性が入っているというか、セリフ回しひとつとっても、一言一言を疎かにせず丁寧にセリフと向き合う努力家の女優さなんだろうなぁ、と勝手に想像してしまいます。

この長七郎江戸日記シリーズ・第1部を始め、80年代の時代劇では割とよく見かける女優さんでしたが、90年代に入ってからはプッツリと見かけなくなってしまいました。いやはや残念。

本作では冷酷な柳生によって使い捨てにされる哀れなくのいちを演じているのですが、その持って生まれた可憐さ全開のオーラゆえに、演じるくのいちの哀れさがより引き立ってますね。キャスティングを担当した方のセンスも見事なものです。

 

本作の脚本担当は小川英氏と胡桃哲氏のゴールデンコンビ。江戸日記シリーズのスペシャル版を担当するのはだいたいこのお二方なんですが、本作の次週にスペシャル版(=「柳生の陰謀」)が放映されたこと、また本作のストーリーにもスペシャル版に付きものの将軍家お家騒動が絡んでいるあたり、本作のシナリオは、もともとスペシャル版用に作られ始めたものをベースとしているのかもしれませんね。