時代劇名優一覧(女優編)・三浦リカ/新・三匹が斬る! 第15話:妖怪のカッパ退治は美女と道づれ(制作/テレビ朝日・東映)

時代劇名優一覧(女優編)・三浦リカ/新・三匹が斬る! 第15話:妖怪のカッパ退治は美女と道づれ(制作/テレビ朝日・東映)

80年代以降、数多のテレビ時代劇シリーズにゲスト出演されて来た三浦リカさん。その地味ながら愛らしい風貌を活かして町家の生娘を演じたかと思えば、派手めの化粧とキレのいい啖呵で以って盛り場のやさぐれ女役をやらせても右に出る者なし。まさしく各局の時代劇という時代劇にひっぱりだこの様相でしたが、本作は、清楚なリカさんと「アバズレ」リカさんの両方が楽しめる「一粒で二度美味しい」お話。

 

河童が人々を「河童ヶ淵」に引きずり込んで殺してしまうという河童騒動が起きている赤目宿で、河童から身を守る「河童の友」なる、例によって胡散臭い御守り袋を街頭販売していた陣内(春風亭小朝)は、赤目宿に詰める黒岩代官所の出役・石部春之進(南条弘二)に詰所へと連行されます。

河童退治を手伝うついでに、春之進に恋愛指南をする羽目になる陣内(たこ)。そこに満を持してリカさんが登場。

「ごめんください」

時代劇名優一覧・三浦リカ

「おはぎを作りましたので、お口に合うか分かりませんが、石部様に食べて頂こうと思いまして」

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春之進に引き合わされた初対面のたこにも礼儀正しいお絹。

「絹でございます」

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美しい所作振舞いと言葉遣い、そして見る者全てが癒される穏やかな笑顔。今日もヒロインの風格十分なリカさん。

 

一方、「一日一善」を信条とし、竜仙寺の正直庵に住まいする老人・善右衛門(青木義朗)に心服、その弟子となった千石が、正直庵の風呂に浸かっているところに、「お客様、お湯加減いかがでございますか?」と語りかける女性あり。

続けて「お背中流しましょうか」

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千石「あの・・・貴女は?」
お絹「善右衛門の姪で、絹と申します」

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早速、一目惚れする千石ですが、その後、善右衛門に、お絹には良縁が持ち掛けられていることを知らされます。もちろん、例の春之進ですね。

 

場面変わって・・・

代官所から陣内が持って来た例のおはぎの重箱に隠されていた春之進からの恋文に読み入るお絹さん。

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そこに千石登場。「石部という男に惚れてるのか!?」と単刀直入に訊く千石さんに応えるお絹。

「分かりません・・・」

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自分の気持ちが分からない、というお絹に「オレは自分の気持ちは決まってる。其方に初めて会ったときから・・・其方が、好きだ!」と、ド直球を放り込む千石ですが・・・

「なら・・・私を力ずくで奪ってください」

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うひょ~、意味深!

「女はいつも・・・誰か強い力でさらってくれるのを待ってるんです」

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それだけ言い残して去っていくお絹。千石さんは後を追うこともできないのでした。

 

さて翌朝、思い余った千石は善右衛門に、お絹を妻とする権利を賭けて春之進と剣術の試合をさせてくれ、と申し出ます。

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難色を示すばかりか、むしろお絹に春之進との縁談を勧める善右衛門。

困惑した表情を浮かべながら・・・

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意味ありげな視線を千石に投げかけるお絹。

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そこに「その勝負、お受けいたします!」と春之進が乗り込んで来て、「勝ったら私の妻になってください!」とお絹に懇願するのですが・・・

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またしても困った表情を浮かべながら・・・

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縋るような表情で千石の様子を窺うお絹。

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上手いなー。セリフなしでもお絹の心情が手に取るように伝わって来ますなー。

で、剣にかけては右に出る者のない千石、どれだけヤラれても必死になって向かって来る春之進を木刀で容赦なくボコボコにしたうえで、善右衛門に自分の勝利を宣言するのですが、春之進のひたむきさを見てしまっては返事は出来ぬ、と善右衛門。

「あとはお絹の気持ち次第じゃ・・・」と善右衛門は言い残して去っていき、一人その場に残されるお絹。

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千石と暫し見つめ合った後・・・

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駆け付けた陣内とお蝶(長山洋子)に、お絹を春之進に譲るように諭され、「うるさい!オレたちはもう将来を誓い合った仲なのだ!」とキレる千石を置いて、お絹はどこかに行ってしまうのでした。

 

さて、赤目宿の名主・仁左衛門(結城市郎)の屋敷で殿様(高橋英樹)、陣内、お蝶が春之進らと一年前の二万両強奪事件について話し合っているところに、善右衛門が茫然とした様子で登場。お絹が目の前で河童に河童ヶ淵へと引きずり込まれた、と泣き崩れる善右衛門。

その回想シーン。

時代劇名優一覧・三浦リカ

何で河童が「あ~れ~、お代官様~」ごっこすんねん・・・

首を捻りたくなるシーンではあるが、リカさん、水の中にまで入って熱演。

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たぶん吹替えでなくご本人なんですが、頭まで水没。

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女優さんも大変だ。

で、お絹にフラれたと思い込み宿場を後にしようとしていた千石ですが、お蝶にお絹が河童に殺されたと聞き、慌てて正直庵へと戻ります。

そこでお絹はまだ生きているばかりか・・・

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実は善右衛門の女だったことまで知ってしまう千石。

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善右衛門こそが、一年前に近隣の天領から掻き集められて輸送中だった日光東照宮の改築費用・二万両を女狐峠で強奪し、当時の黒岩代官だった春之進の父親・靱負を切腹に追い込んだ盗賊・墓石の孫兵衛で、孫兵衛一味は問題の二万両を河童ヶ淵に隠したうえで、人々を遠ざけるために河童騒動を仕組んでいたのでした。

 

孫兵衛が、二万両の輸送ルートを孫兵衛に漏らした当時の代官所次席で、今や靱負に替わって代官に収まっている兵藤軍太夫(浜田晃)共々、河童ヶ淵へと二万両の回収に向かうなか、ひとり竜仙寺に残って仏前に佇むお絹。

時代劇名優一覧・三浦リカ

メイクも衣裳も変わりました。地味なリカさんもいいですが、このケバケバしいリカさんも、これはこれで素敵・笑

で、どこかに出かけようとするお絹の前に千石さんが立ち塞がります。

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「オレだけでなく、あんな純真な石部まで手玉に取りやがって」と詰(なじ)る千石に、あばずれの女盗賊・夜桜お絹ともあろう女が「手玉に取り損なったんだよ」と答えるお絹。

「あの人があんまり純真だから・・・」

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十歳のときから孫兵衛に手下として育てられたお絹は、孫兵衛に命じられるがまま、色仕掛けで垂らし込む目的で春之進に近づいていたのでした。

千石「で、オレもついでにからかったのか?」
お絹「ちがうよ、あんた私によく似てる・・・」

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「似た者同士、気が合ったって言うか・・・」と言うお絹を千石が鼻で笑ったところでお絹さんから一言。

「こういうの惚れたって言うんだろ?」

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予想もしなかった一言に言葉を失う千石。んー、本来ならグッと盛り上がるシーンなんですけどねぇ、何か無理やりなんですよねー。気が合ってた、て感じでもなかったじゃん。

それはともかく、リカさんのお芝居は続きます。

「あのとき連れて逃げてくれてたら、どこへでもついて行ったよ・・・」

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これから代官所に行って本当のことを春之進に話す、というお絹に「急に仏心が出たってのか?」と尋ねる千石に、死んだことになっている自分はこのまま死んでもいいと思っている、と応えるお絹。

「その前に、せめて本当の事が言いたいんだよ」

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さて、河童ヶ淵から二万両を回収して竜仙寺へと運び込んだ孫兵衛や兵藤の一味ですが、そこに殿様、千石、陣内が乗り込んで来てラス殺陣が開始されます。

その様子を見守るお絹(代官所に行ったんじゃなかったの?)。

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と、戦っている千石を短筒で狙う孫兵衛に気付くお絹。

「あぶない!」

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そして庇うように千石の前に躍り出て銃弾を2発浴びるお絹。

時代劇名優一覧・三浦リカ

弾着ありです。カッコいい!

さて、リカさん臨終の場面。

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「しっかりしろ!」と呼びかける千石に「せんごく・・・」と応えるお絹。

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「一度・・・そう、呼んでみたかった・・・」

時代劇名優一覧・三浦リカ

んー、ちょっと意味が分からない・・・

「あんた・・・いい友だちがいて・・・幸せだね・・・」

時代劇名優一覧・三浦リカ

そういう事ですか・・・

で、千石は「お前だって、オレの大事な友だちじゃないか!」と応えるのですが・・・ 何ともピンと来ない脚本だ。

「友だちより・・・女房の、方がいい・・・だって・・・男と・・・女じゃないか・・・」

時代劇名優一覧・三浦リカ

まぁ、そういうオチなら(何とか)分かります。

で、そこまで言って息を引き取るお絹さんでした。

時代劇名優一覧・三浦リカ

 

シリーズ5作目となる「新・三匹が斬る」ですが、放映されたのは92年から93年にかけて。若者を視聴者として呼び込みたかったのか何なのか、時代劇にそぐわない「現代語」が多用されるなど、各局のテレビ時代劇全般に渡って脚本における時代考証がいい加減になりつつあった時期ですね。

本作でも「結婚」「純真」「友だち」など、違和感を覚えるキーワードがお話のそこかしこに登場するのですが、そんな状況においても、哀れな女盗賊の儚い恋心や最後に残されていた一片の良心を艶やかに演じ切り、観る者の心にくっきりと爪痕を残している(はずの)リカさん、さすがのプロフェッショナルです。

 

脚本は鈴木則文氏。一時、東映東京に移り「トラック野郎」シリーズの監督として名を馳せた方ですね。同時期に東映に入社された中島貞夫氏もそうですが、60年代に京都の東映で助監督として活躍された方には、脚本まで手掛けられる方も少なくなかったとか。

本作については、「大人の恋愛物語」として観れば観られなくもないんでしょうが、時代劇としては色々突っ込みどころが散見されて、ちょっと「?」じゃないですかね・・・。リカさん(と千石さん)の「役者としての魅力」という力技で無理やり作品として成り立ってる感が否めません。