時代劇名優一覧(女優編)・高梨亜矢/暴れん坊将軍V 第30話:紀州から来た刺客(制作/テレビ朝日・東映)

時代劇名優一覧(女優編)・高梨亜矢/暴れん坊将軍V 第30話:紀州から来た刺客(制作/テレビ朝日・東映)

脇役チェックに余念のない熱烈な時代劇ファンの方でも、ほとんどその名前を知らないと思われる高梨亜矢さん。実際、90年代前半のテレビ時代劇にチョロチョロッとゲスト出演されたかと思ったら、あっと言う間にお見かけすることのなくなった、半ば幻の(笑)女優さんです。

ただ、暴れん坊将軍シリーズに限っては、第4部、第5部、第6部の計3回、出演されていて、特にその存在感が際立っていたのが2作目の出演となる本作。かつて自らを追放した吉宗(松平健)に恨みを抱く旧知の忍び・小十郎(伊東達広)に騙され、芸者に成りすまして吉宗に接近、その命を狙う紀州の女忍び・お七を演じる亜矢さん。その乏しい出演回数にも関わらず不思議と時代劇に馴染んだ名演技、いやぁ、素晴らしいです。

 

吉宗が山根藩に潜入させた御庭番・文吉(笹木俊志)が何者かに殺害されるなか、安次郎(小野ヤスシ)に連れられ辰巳にやって来た吉宗=新さんは、司裕介氏を始めとするごろんぼに絡まれている芸者を助けます。その芸者こそ、小鈴を名乗るお七役の亜矢さん。

「小鈴と申します。危ないところを、ありがとうございました」

時代劇名優一覧・高梨亜矢

お近づきのしるしに、と酒席に誘われる新さんと・・・

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全く眼中になし、の扱いが可哀想な安次郎・笑

そして新さんの目につく左手のほくろ。

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新さんは小鈴に見覚えがあるのですが、誰だか思い出せません。そんななか、ひょっこりめ組に現れる亜矢さん。

「こんにちわ」

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辰三郎(北島三郎)以下、め組総出で出迎えるなか・・・

「辰巳の小鈴と申します」

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(ほとんど時代劇経験ないくせに)何かもう、漂う風格が尋常でない・・・

おさい(浅茅陽子)が見ているにも関わらず、辰三郎までもがデレデレ舞い上がるなか、ふと安次郎を目に止めた亜矢さん。

「安次郎さんでしたね?」

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「徳田様とご一緒に、またどうぞ」

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「では」

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一陣の風の如く颯爽と去って行く小鈴姐さん、芸者芝居のメーター振り切っちゃってます。史上最強のザ・じじ殺しって感じ・・・

 

さて場面変わって・・・ 編集の都合か、いきさつはよく分からないものの、安次郎をまいて新さんと二人きりになった設定の亜矢さん、通り雨に降られた流れで新さんと二人して船宿へ。

「あらあら、びしょ濡れ・・・」

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傘を借りて帰るか、と言う新さんに「私がもらって来ます」と部屋を出て行った亜矢さん。傘の代わりに酒と料理を手に入れ、そして取り出される怪しげな粉薬・・・

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新さんも、帰るんじゃなかったんかい!(笑)

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ここで、酒を注ごうとした小鈴の左手のほくろを見ていて、ようやく思い出す新さん。

小鈴「どうしたんですか?」

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吉宗「お前によく似た女を思い出したのだ」
小鈴「!」

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吉宗「その女、今ごろ故郷(くに)で、幸せに暮らしておろう」
小鈴「・・・」

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新さんに「さぁ」と促されて(粉薬入りの)酒を注ぐ小鈴。

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「・・・」

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問題の酒を一気に飲み干してしまった新さんに「お前も飲まんか?」と聞かれるが、新さんの「その女、今ごろ故郷(くに)で幸せに暮らしておろう」を思い出しながら動揺を隠せない小鈴。

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注がれた酒には口をつけず、外の様子を伺いに席を立つ亜矢さん。

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「座敷に出なくていいのか?」と尋ねる新さんに「この雨ではどうせお茶っ引きです」と応える小鈴。

「さ、飲みましょ?」

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しかし、眠くなって来た、と言って新さんはそのまま寝てしまいます。

辺りの様子を伺いながら、そっと障子を閉める亜矢さん。

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新さんの背後に回って帯から刃物を取り出し・・・

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うわー、新さん、後ろー(笑)

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ここで都合よく寝返りを打つ新さんに、まじビビりの・・・

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亜矢さん・笑

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レッツ・リトライ!

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しかしもう一度、新さんの「その女、今ごろ故郷(くに)で幸せに暮らしておろう」を思い出し、結局、新さんを殺すことは出来ない亜矢さんなのでした。

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芸者芝居が恐ろしく板に付いている一方で、やはり経験不足からか、ふとしたところで「斬新な」お芝居をしてしまう亜矢さん・笑 ただの寝返りに対して、仮にもそれなりに修行を積んでいるはずの忍びが、あそこまでビビるというのはどうなの?な感じがしないでもないですが、そうは言っても標的は天下の将軍様ですし・・・まっ、いっか。

 

さて吉宗に命じられ、小十郎をマークしていた茜(入江まゆ子)は、小十郎と小鈴の密会現場に出くわします。ひと目で小鈴が紀州にいるはずのお七であることに気付いた茜は吉宗に報告。「やはりお七か」という新さんに、お七という娘とはどこで会ったのか、と尋ねるのは同席していた辰三郎。「紀州だ」と答えた新さんは、辰三郎に事情を説明し始めるのですが、その回想シーンに田舎娘姿の亜矢さんが登場!

紀州藩主時代、紀州の山中で野駆けの帰路、道に迷ってしまった吉宗が目にしたのが、川で髪を洗っているお七。

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うぉぉっ!亜矢さん、すんげー筋肉質・・・笑 まぁ、忍びですから、それはそれでアリですけど・・・。

で、覗いている(?)吉宗に気付き、手元にあった鉈を吉宗目がけて投げつける凶暴な亜矢さん。

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思いもかけず飛んできた鉈を躱して「道に迷うたのだ」と吉宗は弁明するのですが、そんな事より亜矢さん、背中周りの筋肉もすげー・笑

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「どうしたのだ?お七!」と「お七の惚れた男」喜三郎(中嶋俊一)が登場。吉宗に城下への道を教えて、このシーンはひとまず終了。

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続いて、その年の暮れに将軍職を拝命した吉宗が、江戸へ連れて行く女忍びを決めるシーン。

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お七には喜三郎がいることを知っている吉宗は、二人を離れ離れにさせまいと茜を選ぶのですが、そんな事とはつゆ知らず、選に漏れて複雑な表情を浮かべるお七。

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回想シーンの最後に、田舎娘時代の茜ちゃんとのツーショット(おまけ)。

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この喜三郎というのが割と重要人物で、つまり、この時点でお七は、喜三郎が「吉宗配下の忍び」に殺されたと小十郎に聞かされており、その復讐を果たさんとしているわけですが、もちろん喜三郎殺しの真犯人は他ならぬ小十郎という、お約束のストーリー。

 

場面変わって・・・ 事情を知った辰三郎に呼び出され「その人(新さん)の目をよぉ~く見るんだ、嘘をついてる目か、本当の目か」と諭されたお七は新さんと再会。互いが生まれ育った山(と言っても同じ紀州の山なのですが)の話などしながら連れ添って歩く二人。

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秋になると山が真っ赤に染まる話をした新さんは、真っ赤な紅葉の枝をお七に渡すのですが・・・

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左手のほくろを見つめている新さんに気付いて、左手をそっと隠すお七。

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それから新さんの目をじっと見つめ、自分が騙されていたことを察するお七。

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吉宗「どうだ、山へ帰る気はないか?」
お七「私が好きだったひとは・・・もういないんです!」

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お七が泣き崩れたところで流れ始める「夜明け」(松平健)のイントロ・笑

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「夜明け」が流れ終るまでのおよそ1分間、セリフもないままにアングルをころころ変えられ、何度も泣き芝居をしなければならない亜矢さん。

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どんな名優が演じても、どうしてもサブくなってしまうシーンです。ちょっと気の毒な亜矢さん・笑

そこへ福中勢至郎氏率いる属性がよく分からない浪人者の集団(小十郎の仲間?)が現れて二人を襲撃、手傷を負ったまま吉宗の前から姿を消すお七。

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吉宗が「小鈴!」と何度も呼ぶ声に心が揺れながらも・・・

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意を決して小十郎の元へと向かったお七。文吉の探索によって領内の隠し金山を吉宗に嗅ぎ付けられたと思い込み、吉宗暗殺を小十郎に命じた山根藩主・五十嵐豊後守(佐原健二)と小十郎の密談を盗み聞き。

小十郎「あの女も馬鹿な女です。惚れた男を吉宗に殺されたと吹き込んだところ・・・」

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小十郎「苦もなく騙されました」

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この、はっと驚いて口に手を当てるような仕草も、忍びとしては斬新過ぎる・・・

で、そのままめ組に向かい、吉宗に会うことなく玄関先でひっそり別れを告げるお七なのでした。

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さて、いよいよ舞台は大詰め。

「小娘などに任さず、その方が手を下すのじゃ!」と五十嵐に喝を入れられ、自ら吉宗暗殺に出向いた小十郎の前に立ちふさがるお七。

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「よくも私を騙したね・・・喜三郎様を殺したのも、お前だね!」

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で、吹替えのスタントマン同士によるキレ味鋭い殺陣の結果、ズタズタにヤラれるお七。吉宗に命じられお七を追っていた才三(五代高之)と茜が駆け付けるのですが・・・

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「茜ちゃん・・・私も、上様のお役に立ちたかった・・・」

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「私・・・上様を疑ったりして・・・バカよね・・・」

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絶命。

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んー、この最後のヌーブラヤッホーみたいな忍者衣裳は何とかならんかったんか(亜矢さんがエラい老けて見えるぞ)・・・

 

64年生まれということで、この作品に登場した頃にはギリギリ20代だったと思われる高梨亜矢さん。茜役の入江まゆ子さんとほぼ同世代という事になりますが、どこかお人形のような可愛らしさを感じさせるまゆ子さんとは対照的に、とにかく大人びてるとでも言おうか、そのお姿からは年齢やキャリアに似つかわしくない、得も言われぬ貫録が滲み出ておられます。そんなわけで、あれ?実は老けてる?と思ってしまうシーンがあったり、あと、おぼこい田舎娘の役はちょっと無理があるような気がしないでもなく・・・笑

しかしその所作振舞いも含めて、芸者芝居はお見事でしたねぇ~。ナチュラルに醸し出される小粋なお姐さん感が半端ないです。もちろん時代劇出演でキャリアを重ねた女優さんであれば、どうという事もないのでしょうが、とにかく彗星のごとく現れて、あっと言う間にいなくなってしまった女優さんですから、もう余人の遠く及ばぬ卓越した天賦の才を感じずにはいられません。その後の活躍、見てみたかったなぁ~・・・。