時代劇名優一覧(女優編)・水原まき/名奉行 遠山の金さん 第5話:闇のおんな仕事人(制作/テレビ朝日・東映)

時代劇名優一覧(女優編)・水原まき/名奉行 遠山の金さん 第5話:闇のおんな仕事人(制作/テレビ朝日・東映)

70年代から90年代にかけて多くのテレビ時代劇にゲスト出演されていた水原まきさんという女優さんがいらっしゃいまして、もうとにかく上品な貴婦人といった雰囲気をビンビン漂わせる、昭和の時代にあっては間違いなく正統派の美人女優と評されるべき素敵な女優さんでして、それなのに何でか悪役にばっかりキャスティングされるもんだから、却ってより一層、鮮やかに記憶に残る印象深い女優さんだったわけであります。

そんなまきさんの出演作品のなかから、松方弘樹氏が主演を務めたテレビ朝日系列の人気時代劇「名奉行 遠山の金さん」シリーズ初期の作品をピックアップ。

 

今年に入って江戸で五件の殺人事件が発生。手口は似ているものの、何の脈絡もない五人が殺害されている事から殺し屋の仕業と睨んだ金四郎(松方弘樹)は、最後の被害者である浜町の穀物商・志摩屋千蔵(田中憲治)を恨んでいた者がいないか、お仙(坂口良子)に探索を命じます。

一方、町娘三人(鈴川法子/田辺ひとみ/奈波登志子)にせがまれて小間物屋の一石屋にやって来た金さん、主の万造(寺田農)に「若ぇ女の子に狙い絞るなんて当りだねぇ」などと声をかけてるところに田辺ひとみちゃんが櫛を持って来て「これいくらですか?」と万造に尋ねると答えは二百文。「二百文!?」と表情が曇るひとみちゃんですが、そこへ万造の女房・お竜役のまきさん登場!

「お前さん?少し、勉強してさしあげたら?」

時代劇名優一覧・水原まき

う~む、美しい!櫛の値段も百八十文に下がってひとみちゃんも大喜び!

 

お仙の探索の結果、殺し屋に志摩屋を殺させたのは商売敵である羽黒屋仁兵衛(相馬剛三)と判明。同心の大庭(山内としお)に羽黒屋を捕らえさせた金四郎、口を割らない羽黒屋を放免して泳がせることにしますが、大庭が殺し屋一味に尾行を妨害され、羽黒屋は殺害されてしまいます。現場に駆け付けた金四郎に「たつみ橋・・・お地蔵さんの前掛け・・・う、う、裏返し・・・」と、殺し屋一味への接触方法を言い残して息を引き取る羽黒屋。

果たして、殺し屋一味への接触に成功し、一味の指示通り大隅神社の絵馬堂にやって来た金さん。絵馬堂の中へ「たつみ橋でお願いしたモンでござぃやすよ・・・」と声をかけるとスッと格子戸(でもウラから見るとベニヤ張りだな・・・)が開いて・・・

「頼み事を聞きましょう・・・」

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金さん「人ひとり殺してもらいてぇんですがね・・・」
お 竜「よぉござんす・・・一人頭五十両、前金で二十五両頂戴します」

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とお竜が言い終わるや否や、勢いよく格子戸を開け放つ金四郎。

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金四郎に「仲間どこだ?江戸の暗闇で生きてる、ナメクジ共だ」と詰め寄られ、それまでの声色と打って変わって、凡そお上品な貴婦人らしからぬドスを効かせながら・・・

「後ろで張ってるよぅ!」

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すかさず殺し屋仲間である常州無宿の円蔵(成瀬正孝)と下総無宿の伊三次(野口貴史)のコンビが登場、二人が金さんに襲いかかる間に逃げ遂せるまきさんでした。

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ま、シナリオ上、この時点では、いちおう頭巾の女の正体はまだ判明してないわけですが、このあと逃げる円蔵を追う金さんに通りがかりの態とは言え万造がぶつかって来るし、もう頭巾の女=まきさんでいいやね・笑

 

話は変わって・・・

八年前、盛岡領内で起きた押し込み強盗に絡んで「無実の罪」で捕えられるも牢を破って失踪した許婚の新助という男を探して、盛岡から江戸にやって来たおとよ(朝加真由美)という女が、街で新助によく似た男を見かけて声をかけるのですが、自分は新助ではなく一石屋万造という者だ、と逃げられてしまいます。その話を聞いたうえで、与力の瓢兵衛(ケーシー高峰)に命じて取り寄せた盛岡藩の調べ書きの内容から、一石屋万造の正体が新助である事に気付く金四郎。

一方、諦めきれないおとよは単身一石屋へ。軒先で店内の様子を窺っていたおとよを店の奥に招き入れ、八年前、身の証しを立てるには逃げるしかなかった、と頭を下げる万造(=新助)。そんな万造(=新助)に、意を決して「新助さん、おかみさんは・・・?」と尋ねるおとよ。

黙って頷いた万造(=新助)に「お竜、出ておいで」と呼ばれて、まきさん登場!

「お竜です・・・」

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う~む、やはり美しい!

で、「どうしてなの?あれほどはっきり私をおかみさんにするって言ってくれたのに」と万造(=新助)を責めるおとよに「おとよさん、うちの人責めないでください」とまきさん。

「あなたという人がいるのを知りながら、こうなったのは・・・全て私のせいなんです」

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「お竜、その話は・・・」と遮ろうとする万造(=新助)を「いいえ、言わせて」と制し・・・

「おとよさん・・・私・・・松戸の宿で女郎をしてたんです・・・」

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「そこへ小間物の行商に来ていた、この人のこと好きになって・・・」

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「おとよさん?私からこの人盗らないで・・・お願いします・・・」

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万造(=新助)にも「分かって欲しい、頼む」と頭を下げられ、おとよさん万事休す。

さて、このシーンのまきさん、寺田農氏とセットで醸し出される「適度な」わざとらしさがいいですね・笑 お話の進行上、この夫婦がワルであることに視聴者はもう気づいてるはずですから、ここは「わざとらしい」お芝居こそ正解。でも何かちょっとだけ「健気な女」感も滲み出ているという、絶妙なわざとらしさが素晴らしい!

 

で、こうなると万造(=新助)にとっては邪魔者でしかないおとよさんと、ついでに金さんも殺すことにした万造(=新助)。「今度の仕事は私自身が頼み人だ」と、頭巾を取って顔を露わにしながら円蔵と伊三次の前に切り餅二つ並べます。

「私からもお願いするよ・・・」

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と、まきさんも頭巾を外してお竜の正体も確定。

「もう私たちは一蓮托生、死ぬも生きるも一緒・・・」

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ほんのりドスを効かせて。

「いいね?」

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うわ~、悪い顔するなー・・・笑

そして、みんな似たような境遇の生まれなのか、万造、伊三次、円蔵の順番で世の中への恨みつらみを並べ立て、最後を〆るまきさん。

「そうだとも!」

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「貧乏な生まれだっていうだけで、これまでひどい目に遭わされ続けて来た!」

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万造やお竜の言い分を聞いてる限り、万造(=新助)が無実の罪で捕まったとか、お竜が女郎をやってたとかって話は、どうやら本当みたいです。まぁ、万造(=新助)が無実であった件は、最後にお白州のシーンでも明らかになるわけですが・・・。

で、まずはおとよを殺しに覆面姿でおとよの住まう長屋へと向かった四人でしたが、金さんとお仙に邪魔されて襲撃は失敗。今度は、桜湯の風呂焚き場にいるおとよの元に堂々とお顔丸出しで現れるまきさん。

「おとよさん!やっぱりここだったのね!?」

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万造が心臓発作で倒れて「うわ言のように、おとよ、おとよって言い続けているの」とまきさん。

「それで私、頭を下げてお願いに来たの・・・」

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「一目会ってやってくれませんか!?」

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お化粧薄目のまきさんがまた、とんでもなくエロ美しい!

で、お仙に一言断ろうとするおとよを「私が言っておくから」と制するお竜、おとよが慌てて駆け出して行ったのを確認して・・・

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おとよを餌に金さんを深川佐賀町の荒れ寺に呼びつける文を結びつけた簪(かんざし)を、ダーツよろしく風呂釜の蓋目がけてポイッ。

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さて、伊三次に拉致され、軟禁されている荒れ寺で、自分を殺そうとしたのが万造(=新助)であることを本人の口から知らされるおとよに、追い討ちをかけるまきさん。

「あんたの後ろには、お上の手らしい遊び人が付いている。二人ともちょいと目障りなんだよね・・・」

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「これがあの新助さんなんて・・・信じられない」と愕然とするおとよ。「それが、世の中というもんだ、ハッハッハッハ・・・」と万造が立ち上がったところに投げ込まれる巨大な桶。その機に乗じて逃げ出そうとするおとよに朱塗りのドスを突き付け凄むまきさん。

「動くんじゃないよっ!」

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後ろを振り返ったまきさんの、ドスの握られた右手に・・・

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金さんの投じた胡桃の根付が直撃!

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「・・・!」

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「お邪魔しますよぉ?」と金さんが登場、万造の「みんな出て来い!」で浪人衆がぞろぞろ現れて金さんに斬りかかるが「ガタガタ騒ぐな埃がたたぁ!」と一喝する金さん。「冥途の土産だ、よっく、見やがれぃ!」と片肌脱いで桜吹雪を御開帳。

「・・・!」

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浪人者全員に加えて円蔵、伊三次、万造とバッタバタ倒されて・・・

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なりふり構わずの態で逃亡を図るも・・・

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あっさりとっ捕まって(いい表情です・笑)・・・

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ベチンッ!

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さて、いよいよお白州の場面。金四郎が「一同の者、面を上げぃ」

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万造一味の罪状を諳(そら)んじた金四郎に「金で人殺しを請け負う裏稼業を営みおりし事、明白。それに相違ないか?」と尋ねられ「とんだ濡れ衣でございます」と万造がとぼけるのを横で黙って聞いてるまきさん。

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「羽黒屋はお竜に、金五十両で志摩屋殺しを頼んだのではないのか?」と金四郎に問われ・・・

「とんでもな~い、身に覚えがございません」

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その後、おとよが万造と新助は同一人物であると証言するものの「私は、こんな女は知りません」と白を切る万造に、万造は盛岡で牢を破った後、江戸に来てからほかの三人と共に人殺し稼業を始めた、と金四郎が指摘するのですが「たしかな証拠があるんで御座いますか?」と開き直る万造。

「そうですとも~」と加勢するまきさん。

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「私はしがない小間物屋の女房、証拠もないのに人殺しをしただなんて・・・」

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「証拠もないのに人殺しにされちゃぁ、たまりませんよねぇ?」と後ろに座る円蔵、伊三次に声をかける万造に続いて・・・

「それとも遠山様は、よほどのうつけで?」

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わははははは、と浪人者たち含めた全員が一通り笑い終えたところで円蔵が「おぅ、お奉行!証拠がねぇんだ!帰ぇらしてくれぃ」と胡坐をかいたところで・・・

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突如「やかましいやぃ、静かにしろぃ!」といきり立つ金さん・笑 「あの夜、深川佐賀町の荒れ寺で、見事に咲いた桜吹雪、まさか見忘れたとは、言わせねぇぜぃ?」と二度目の彫り物御開帳。

まきさんは二度目の「・・・!」

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おとよが「金さん・・・」と呟くと同時に・・・

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観念して崩れ落ちるしかないまきさんでした。

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この「名奉行 遠山の金さん」シリーズ、オープニングでゲスト出演含めた全キャストが分かってしまうので、もうその段階で、あぁ、はいはい、まきさんが悪役ね、となってしまうとかの問題はさておき、序盤の「お前さん?少し、勉強してさしあげたら?」の笑顔がとびきり眩しいまきさん、しかしその後は、ひたすら憎たらしいお芝居が続きます・笑

ときにトーンを下げてドスを利かせてみたかと思えば、万造が金さんにやられて最後の一人になってしまった際の何とも情けない(笑)逃げっぷり。もう視聴者が期待する定番通りの悪役を見事に演じきっておられる水原まきさん、地味ながら目が離せない名女優です。