時代劇名優一覧(女優編)・長山洋子/半七捕物帳 第14話:折り鶴の女(製作/ユニオン映画 制作協力/東映太秦映像)

時代劇名優一覧(女優編)・長山洋子/半七捕物帳 第14話:折り鶴の女(製作/ユニオン映画 制作協力/東映太秦映像)

今は昔の80年代、アイドルとして「そこまで売れてるわけでもないけど、まぁみんな知らないわけでもない」位のポジションをキープ、テレビにちょこちょこ出ていたかと思ったら、急転直下、東映京都(とテレ朝)が誇る人気テレビ時代劇「三匹が斬る!」シリーズのレギュラーに抜擢、高橋英樹氏演じる「三匹のリーダー格」矢坂平四郎に付き纏うコミカルな女掏摸師・お蝶を演じて一躍、時代劇ファンの人気者に登り詰めた(たぶん・笑)長山洋子さん。

クリクリお目々がどこまでも愛くるしいお顔と甘ったる~い鼻声が絶妙にハマる「殿さま命」なお蝶の、あまりに無垢で天真爛漫なキャラが観る者に与えるインパクトが強烈過ぎて、却って他の役にはキャスティングしづらかったのか何なのか、他作品への進出はさほど広がらず仕舞いでしたが、なかなかどうして芸達者と言うか、お蝶とは似ても似つかぬ、復讐心に駆られた怨念迸る、しかしそれでいてどこか切ない、そんな深みのある女キャラを淡々と演じ切る洋子さんの女優としての魅力を再確認できるのが、里見浩太朗氏主演の人情時代劇シリーズ「半七捕物帳」。

 

物語は芝居見物帰りのお千加(片平なぎさ)とお初(有沢妃呂子)が街で庄太(西山浩司)を見かけるところからスタート。腹の具合が悪いので医者に行くと主張する庄太の様子がおかしいので二人して尾けてみると、庄太が目指す町医者の診療所の前に熊蔵(丹古母鬼馬二)まで登場。先を争う二人の背後から、患者役の春藤真澄さんと共に、この診療所で手伝いをしている娘・おしのを演じる我らが永遠のアイドル・長山洋子さん登場。

時代劇名優一覧・長山洋子

「庄太さんに熊蔵さん・・・!」

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出て来て5秒で早くも元アイドルの真骨頂、必殺のキューティーフェース炸裂!

お千加とお初が診療所の裏に回ると、そこには半七(里見浩太朗)の姿も。診療の手伝いに忙しいおしのの姿を眺めながら鼻の下を伸ばす庄太と熊蔵に「呆れてモノも言えやしない」と手厳しいお千加ですが、「悪い娘に引っかかるわけじゃねぇ」と意に介さない半七親分でした。

 

そんな折、広小路の呉服問屋・駿河屋市兵衛(久富惟晴)の妾、おもん(和田かつら)が女の按摩に喉を掻き切られて殺害されるという事件が発生。現場には尾羽根を引っ張ると翼が羽ばたく変わった折り鶴が。半七にその折り鶴を見せられて明らかに顔色が変わる駿河屋・・・

と、診療所では同じ折り鶴を折って「はい、出来上がり」と男の子に手渡すおしの。

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そこへ「いつ見ても上手いもんだねぇ、おしのさんの折り鶴は・・・」と割り込んで来るのは、日本橋に店を構える反物問屋・相模屋の主人、利助(中田浩二)。

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おしの「相模屋さん、診察はもう終わったんですか?」
相模屋「あぁ、どこも悪いところはないそうだよ・・・」

のやり取りの後の洋子さん。

「良かったですねぇ~」

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可愛過ぎ。

で、退出する相模屋を見送りに洋子さんも中座するのですが、可愛そうな男の子は、後ろで様子を見ていた(おしのファンの)熊蔵に怖~い顔でビビらされて、折角折ってもらった大事な折り鶴を取り上げられてしまうのでした・笑

 

さて、熊蔵が「つたや」で庄太にその折り鶴を見せびらかす様子を見ていた鳥越の長次親分(山城新伍)は、有無を言わさずおしのをしょっ引いて番屋に。

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遅れて登場した半七に、折り鶴の折り方は父親に教わった、おもんの傍に落ちていた折り鶴は診療所の患者に折ってやったものだ、と主張するおしの。

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さらに、おしのと同じ長屋に住む仕立て職人の房吉(井上高志)というのが現れて、おしのとは昨夜一晩中一緒だったと証言。同心・小山(堤大二郎)の判断でおしのは御解き放ちに・・・。

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しかし、番屋にしょっ引かれたにも関わらず妙に落ち着いた様子のおしのを見て、却って疑いを深める長次と半七。

 

その夜、今度は芸者姿で次なるターゲットである船頭・左平次(石倉英彦)の元に現れる洋子さん。

「ちょいと、船頭さん・・・私にも一杯ご馳走しておくれな」

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早速、船の中に招き入れて茶碗に酒を注いで手渡す(助平な・笑)佐平次さん。

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二杯目を注ぐやいなや、佐平次さんは「へへへへへへ」

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「やめとくれ・・・大声出して人呼ぶよ・・・」と可愛らしく抵抗する、我らが永遠のアイドル・長山洋子さん。

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「いくら大声出したって・・・この夜更けじゃ誰も来やしねぇよぉ、ひゃひゃひゃひゃひゃ」と助平芝居がお上手な石倉氏もよいのですが、続く我らが永遠のアイドル・長山洋子さんの「灯りを消しておくれな」がたまんねー。

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「ひっひっひっひぇっひゃっひゃ・・・」と灯りオフのために一瞬背を向ける佐平次。フッと灯りを消して振り返ると、例の折り鶴の尾羽根を引いて翼を羽ばたかせる洋子さん。

佐平次「その折り鶴は・・・!!」
おしの「お前もやっぱり覚えていたんだね?この折り鶴を・・・」

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短刀を咥えて茶碗の酒を佐平次の顔にぶっかけ・・・

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その喉を掻き切って・・・

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疾風のごとく逃亡する洋子さんでした。

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さて、小山の調べでおもんと佐平次、さらに駿河屋までもが、十五年前まで同じ桐生の織物問屋に奉公していたばかりか、その織物問屋は、一夜の宿を貸した、娘連れで目の不自由な旅の門付芸人(日高久)に殺され金品を強奪されていたことが判明。小山が見つけて来た調べ書きによれば、門付芸人は娘を川に突き落としたうえで喉を掻き切り自害した、とあるのですが、おもんや佐平次も喉を掻き切られていることから、一連の事件に関連性があると睨む小山と半七。

手がかりを求め、半七は当時、その桐生の織物問屋と取引きがあったという相模屋の許を訪ねます。会ったことはない、としながらも、その門付芸人は「羽根が動く折り鶴」を折るという話を駿河屋に聞いた、と証言する相模屋。さらに半七は、門付芸人の娘が当時「七つか八つ」であったことも聞き出します。

 

一方、川の畔には父親(=門付芸人)との思い出に浸り涙するおしの。

「お父っつぁん・・・」

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おしのの回想によれば、駿河屋、佐平次、おもんの三人に追われた父親は、自分の杖変わりとなるおしの(前野有香・子役)を一人逃がすや否や、為す術泣く三人に捕まり、喉を掻き切られて殺害されたのでした。

そこへフラリ現れる半七。

「!」

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「親分さん!」と立ち上がる洋子さん。そこから里見氏の長台詞。

「十五年前のことだ・・・門付芸人だった父親の杖代わりになって、一緒に旅をしていた、小さな女の子がいた・・・その親子が、一夜の宿を借りた桐生の、織物問屋の主人が殺され、下手人として三人の奉公人に追われた、その門付芸人は、幼い娘を道連れに自害をした・・・」

アングル変わって・・・

「だが下手人は、門付芸人じゃなかったんだ・・・おそらく、濡れ衣を着せられ自害に見せかけられて殺されたんだ。だからこそ、その生き延びた娘は、濡れ衣を着せたおもんと佐平次を殺した・・・十五年前ぇに、無残に死んで行った父親の恨みを晴らすためになぁ・・・」

「どうして私にそんな話をするんですか?」と問うおしのに「当時、七つか八つだったその子は、生きていりゃ丁度あんたと同じ年頃になる」と切り返す半七親分。

「あたしがその娘だと仰るんですか?」

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それには応えない半七親分。「残る一人を殺したら、その娘は多分死ぬつもりに違ぇねぇ・・・出来ればもう・・・死人は出したかぁねぇのさ・・・」

我らが永遠のアイドル・長山洋子さんの「心が揺れる」お芝居・笑

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「あいにく私は、その門付芸人の娘なんかじゃありませんっ」

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と言ったところで「おしのさん!」と呼びかける男の声。

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声の主は、おもん殺しの時に「一晩中一緒にいた」などと嘘の証言をして、おしのを庇った仕立て職人の房吉。「失礼します」と頭を下げて、その場を離れる洋子さんなのですが、着物&下駄着用のまま小走りするフォームが妙に美しい!

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さて、身の危険を感じた駿河屋が失踪する一方で、いつものように診療所で働いているおしのさんですが、ふとした拍子に思い出される半七の言葉。

「残る一人を殺したら、その娘は多分死ぬつもりに違ぇねぇ・・・」

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「出来れば・・・もう死人は出したかねぇのさ・・・」

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ん~、何気に深みのあるお芝居してのけてると思います、我らが永遠のアイドル・長山洋子さん!

 

さて、駿河屋は相模屋の寮に匿われているわけですが、実は例の桐生の織物問屋を殺して金品を奪ったばかりか、おしのの父親まで自害に見せかけて殺した一味の黒幕は相模屋その人であり、おしのの仇討ちを手伝うフリをしている房吉も、相模屋の回し者だったのでした。

そんな房吉に「駿河屋の居場所が分かった」と呼び出される洋子さん(プリチー)。

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その夜、相模屋の寮では・・・

不意に三味が奏でられ、脅えに脅える駿河屋に近づく影・・・(三味のネックにちゃんとぶら下げられてる折り鶴・笑)

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鳥追笠を外しながら・・・

「十五年前、お前たちに、無実の罪を着せられ殺されたお父っつぁんの恨み・・・」

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障子ガラリ。

「晴らさせてもらうよ」

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うぉ~、メイク変えて来た。色っぺぇ~・笑

「助けてくれ~」と情けない声を上げる(のが上手い)久富氏を見据えながら短刀ギラリ。

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うわ~、かっこええ・・・これ、シビれますね~。あのおきゃんなお転婆娘(お蝶・笑)と同一人物とはとても思えない・・・

一方で、自分を護衛してるもんだとばかり思っていたチンピラ二人(小峰隆司/藤長照夫)に取り押さえられて踏んだり蹴ったりの久富氏・笑

駿河屋「お前たちは相模屋から、私を護るように言われたはずだぞ!」

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そこで、いよいよ大悪の相模屋登場。狼狽える駿河屋に「この連中にお前を護れとは言わなかったよ?どこにも逃げ出さないように、よ~く見張れと言ったんだ・・・」

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「さ、遠慮はいらない、親父さんの恨みを存分に晴らすがいい」とけしかける相模屋ですが・・・

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ここに来て往生際の悪い駿河屋。

駿河屋「待ってくれ!おしの、こいつだ!」

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駿河屋「お前の親父さんを殺したのは、この、相模屋なんだぞ!」

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からの・・・

「・・・!」

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素敵過ぎて悶絶♪

すると相模屋さん、隠し持っていた匕首を以ってして恐るべき手際の良さで駿河屋を瞬殺!

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駿河屋「ぐわー」
おしの「!!」

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「お前が・・・お前がお父っつぁんを・・・!?」と、ここでようやく十五年前の真相を悟ったおしのに「あの時、宿外れまでお前たち親子を追い詰めたのは三人じゃない、実は・・・私を入れて四人なのさ」と得意げな相模屋。

で、回想シーンを挟んで中田浩司氏の長台詞。

「あの時・・・桐生の織物問屋には、仕入れの代金が山のように溜まっていてね、ま、それ払うよりは、ひと思いに主人を殺して、ケリを付けることにしたんだ・・・」

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「おかげで・・・この駿河屋たちには、事ある度に金をせびられて、つくづく嫌気がさしていたんだが・・・」

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「お前が折った折り鶴を見て、あの門付の娘だと分かった時には・・・これでやっと三人の片が付けられると胸を撫で下ろしたさ・・・」

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相模屋「だから、房吉を差し向けたんだ。お前をその気にさせるためにな」
おしの「房吉さんを!?」

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そして房吉も登場。大勢のチンピラたちも駆け付け、福ちゃんに短刀まで取り上げられて我らが永遠のアイドル・長山洋子さん、絶体絶命!

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ですが、実にいぃ~ぃところで「おぅ、相模屋!生憎だがな、手前ぇの書いた筋書き通りには行かねぇぜ?」と半七親分登場!

助かったおしのさんの図。

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「十五年前ぇ、欲のために織物問屋の主人を殺し、幼ぇ娘と辛ぇ苦しい旅を続けながら、真っ正直に生きて来たおしのの父親に、罪をかぶせ、容赦なく殺しやがった・・・」と、半七によって暴かれる十五年前の真実に、おしのさんもついうるうる・・・

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「仏の半七、たった今から鬼になるぜぃ・・・覚悟しやがれぃ!」の決め台詞と共に捕物劇開始。小山率いる捕り方も乗り込んで来て悪党は全員、お縄に。

全員しょっ引かれて静かになった相模屋の寮で、気の抜けた表情で膝から崩れ落ち・・・

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縄を受けるため自ら両腕を(可愛らしく・笑)差し出すおしの。

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半 七「死んだ人間に・・・縄はかけられねぇよ」
おしの「・・・!」

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「門付芸人の娘は死んだんだ・・・桐生の宿場外れで・・・」と粋な計らいの半七親分。

半七「父親と一緒に・・・」

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「親分さん・・・」

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二人も殺しちゃったんで、まぁ普通なら最後、大悪に殺られちゃうパターン(か自害?)なんですけれども・・・(事務所とかの)見えない力でも働いたのか?笑

で、最後は適当に合成されたようなコマにお遍路周りのカッコで登場し、洋子さんの出番は終了するのでした。

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この作品、脚本担当はちゃき克彰氏ですね。何か終ってみれば、ナースに始まり、町娘、芸者、メイクきつめの鳥追(殺し屋?)、そしてお遍路さん、と、我らが永遠のアイドル・長山洋子さんによるコスプレ七変化の巻、って感じがしないでもないですけれども(笑)

実際のところ、台本ありきだったのかキャスティングありきだったのか分からない位、全編通じて洋子さんの魅力が視聴者の胸にビンビン伝わって来る仕上がりで、まさしく我らが永遠のアイドル・長山洋子ちゃんの存在なしには語れない、不朽の名作に挙げられると思います。