時代劇アイドル編・武田京子/名奉行 遠山の金さん(第4部)第20話:妻を売った武士(制作/テレビ朝日・東映)

時代劇アイドル編・武田京子/名奉行 遠山の金さん(第4部)第20話:妻を売った武士(制作/テレビ朝日・東映)

この方もミス映画村から東映専属女優の道に進んだ事で知られる典型的な「時代劇アイドル」ですが、一度は芸能生活を引退後、紆余曲折を経て吉本新喜劇座員(高橋靖子名義)への転身を図った変り種でもあります。

愛嬌のある美貌と豊かな表情の賜物か、はたまたご本人のお人柄あればこそか、天真爛漫な町娘役などが特にお似合いの女優さんでしたが、新しい芸域へのチャレンジか、それとも単なる監督さんの気まぐれか(笑)あっと驚きの悪女役にキャスティングされてしまった、松方弘樹氏主演のテレビ時代劇「名奉行 遠山の金さん」シリーズの1作をピックアップ。

 

口入屋の相模屋彦兵衛(波多野博)が用心棒の浪人(笹木俊志)ともども覆面姿の武士に斬殺された夜、金四郎はならず者の虎次(伊吹聡太朗)率いる一団に殺されそうになっていた女を助けます。

相模屋たちを斬った武士は、主家が改易となって以来、浪人暮らしをしている元岡山正田藩士の桐生一郎太(沖田浩之)で、女はその妻の百合(永光基乃)。

二件の殺しを命じたのは江戸の口入屋を束ねる元締め役の江戸屋作蔵(遠藤太津朗)。自らの不正を告発しようとした相模屋を一郎太に、そして、その一朗太を見初めてしまった一人娘の「どうしても(一郎太の)嫁に行きたい」という願いの妨げとなる百合を虎次たちに襲わせたのでした。

で、江戸屋が江戸城西の丸の改修工事に絡んで共にひと儲け企んでいる作事奉行の河合主膳(和崎俊哉)に一郎太の仕官の口を世話してくれるよう相談しているところに登場するのが、問題の「江戸屋の一人娘」おつやを演じる京子ちゃん。障子をガラリと開けて・・・

「おいでなされませ・・・」

時代劇アイドル編・武田京子

気を利かせてすっと席を外す江戸屋。酒肴を乗せた膳を運んで来た女中たちも下がると・・・

時代劇アイドル編・武田京子

主 膳「一段と、ん?・・・美しゅうなったのぅ?」

時代劇アイドル編・武田京子

「ありがとうございます」とおつやが応えるや否や、お手の早い和崎氏・笑

時代劇アイドル編・武田京子

「あん、いけませぬ・・・」

時代劇アイドル編・武田京子

「御奉公していた折とは違いますから・・・」

時代劇アイドル編・武田京子

生娘のような可憐さを振りまくおつやちゃん、実は主膳の屋敷で既にお手付きのご様子・・・

主 膳「ふふっ、最早、浪人者に心中立てか?」

時代劇アイドル編・武田京子

恋するおつやちゃん、応えて曰く・・・

「男らしゅうて、優しい方で・・・」

時代劇アイドル編・武田京子

「でも・・・ご浪人では、つやはお嫁に行けませぬ・・・」

時代劇アイドル編・武田京子

甘え上手な京子ちゃん、それ以上のお色気シーンはなし。

 

さて、お竜(斉藤慶子)の調べで一郎太が江戸屋の雇う人足の束ね仕事をしていると知った金四郎に命じられた沢庵(石立鉄男)は、工事現場で一郎太に手裏剣を投げつけて腕試し。見事、刀を抜いてその手裏剣を躱した一朗太に嬉し気な様子で駆け寄るおつやちゃん。

「こちらだったの、一朗太さん?」

時代劇アイドル編・武田京子

ちょっと気付くの遅い天然おつやちゃん。

「・・・どうかなさいましたの?」

時代劇アイドル編・武田京子

「いや・・・」と応えながらも明らかにどうかした風の一朗太さんを、さも当然のようにデートに誘う、空気を読めないおつやちゃん・笑

「これから、深川に行きませんか?」

時代劇アイドル編・武田京子

「今日は、八幡様の年の市で、お詣りして、帰りに温かい鍋でも頂きましょう!」

時代劇アイドル編・武田京子

しかしツレない一朗太。

一朗太「折角だが・・・今日は所用がありまして」

時代劇アイドル編・武田京子

引きつる京子ちゃんの笑顔・笑

「つやより・・・大事な用でございますか?」

時代劇アイドル編・武田京子

「左様な事ではない!」とピシャリ遮って一朗太はその場を後に。

時代劇アイドル編・武田京子

一人残されたおつやが・・・

時代劇アイドル編・武田京子

チラリと見やった先に控えている虎次ですが、再度、仲間を引き連れ百合を殺害に向かうも、今度は見習い同心の菊太郎(内海光司)が現場に駆け付け、やはり襲撃は失敗に終わるのでした。

 

場面変わって・・・

百合が子を身籠っていることを知り心境に変化を生じる一朗太ですが、そんな事とはつゆ知らず、どこかの「明神様」へのお詣りに一朗太を連れ出すことに成功したおつやちゃん。

時代劇アイドル編・武田京子

心ここにあらずな様子の一朗太に・・・

「一朗太様?どうかなさいましたの?」

時代劇アイドル編・武田京子

「いや・・・」と応える一朗太に恩着せがましいおつやちゃん・笑

「一朗太様の分も、お願いしましたのよ?」

時代劇アイドル編・武田京子

「早く仕官が叶いますように・・・」

時代劇アイドル編・武田京子

「うふっ、明神様も、直(じき)にお聞き届けになりますわ」

時代劇アイドル編・武田京子

今日明日にでも、と畳みかけるおつや。

一朗太「今日明日にでも?」
おつや「はい、お父様がお話があるゆえ・・・」

時代劇アイドル編・武田京子

「お連れするようにと申していました。きっといいお話・・・」

時代劇アイドル編・武田京子

「一朗太様も、明神様にお礼を申し上げなさいませ?」

時代劇アイドル編・武田京子

「さっ」と一朗太を促しつつ、その後ろ姿を見つめるおつやちゃん、それまでの満面の笑顔と打って変わって、切ない娘心を絶妙に表現して見せるこの表情。

時代劇アイドル編・武田京子

悪女役のはずなのにどこか憎めない、恋する乙女・おつやちゃん。ミス映画村・武田京子ちゃんの無垢なお人柄の為せる業か、はたまた女優・武田京子の演技の幅の限界か・・・笑

 

さて、親子三人、江戸を出る覚悟を決めた一朗太は、仕官の話を断るために百合を連れて江戸屋の寮へ。「人の道に外れて生きるよりは」と男気を見せる一朗太に「お主には負けた」と、その場に同席している主膳。「仕官の儀、進めて取らす」という主膳の言葉を「誠でござるか?」と真に受けた一朗太に突如斬りかかる主膳と、刀を抜いて反撃に出る一朗太。

そこへその他大勢と駆け付け、すかさず捕らえた百合に匕首を突き付けながら、一朗太に刀を捨てるよう迫る虎次。

百 合「いけませぬ!私は構いませぬぅ!」
おつや「ご立派なご新造さんだこと・・・」

時代劇アイドル編・武田京子

「そんなに死にたきゃ、私が殺して差し上げますよ?」

時代劇アイドル編・武田京子

セリフは極悪だが、表情がどこかあどけなく愛らしい京子ちゃん・笑

思わず刀を捨てた一朗太の肩を江戸屋が短筒で撃ち抜き、直後に「ふふははははは!」と勝ち誇ったような笑い声と共に振り下ろされる主膳の鋭い一太刀。

続いて百合をも手にかけようとした主膳の鼻っ面目がけて飛んで来る胡桃の根付け。座敷に飛び込んで来た金さんと百合に後悔の言葉を並べながら絶命する一朗太。金さんの怒りが爆発して、まずは桜吹雪の御開帳。

驚きの余りパパに引っ付くおつやちゃん・笑

時代劇アイドル編・武田京子

ラス立ちの合間に差し挟まれる、金さんの目付け直後のワンカット。

時代劇アイドル編・武田京子

お♪ これも可愛いぞ・笑

そして主膳を倒した金さんにギロリ睨みつけられて・・・

時代劇アイドル編・武田京子

盾になってくれたお父っつぁんが・・・

時代劇アイドル編・武田京子

胸に柄頭をドスンと入れられて・・・

時代劇アイドル編・武田京子

「お父っつぁん!」と絶叫するおつやちゃんなのでした。

時代劇アイドル編・武田京子

 

さて、いよいよ大詰め、お白州のシーン。

金四郎「一堂の者、面を上げぃ・・・」

時代劇アイドル編・武田京子

相模屋と一朗太を殺害したほか、娘の想いを遂げさせるために百合まで殺そうとした、と金四郎に迫られた江戸屋は、一朗太に妻がいることなどは知らず、百合が一朗太と共に寮に乗り込んで来て「娘のおつやを出せ~」と亭主の強請の片棒を担いだ、と主張。

パパの証言に頷きながら百合を見据えるおつやちゃん。

時代劇アイドル編・武田京子

百合は堪(たま)らず、その夜、一朗太と自身は相模屋殺しの代金・百両を江戸屋へ返しに行ったのだ、と反論するのですが、「百両出せと強請に来たのは、一朗太でございます!」とおつやちゃん。

「この女は、亭主が私に言い寄ったのを知り・・・」

時代劇アイドル編・武田京子

「逆上して、お父っつぁんの短筒を奪って、一朗太を撃ったのです!」

時代劇アイドル編・武田京子

嘘っぱちを並べる京子ちゃんに負けじと、すべては自分を助けてくれた金さんが知っている、と百合は必死の訴え。

おつや「金さん?そんな男、知りませんねぇ」
江戸屋「私共を助けてくれたのは、町方の皆さん・・・」
虎 次「あっしも、見た事も聞いた事もありませんぜ?」

と知らぬ存ぜぬの容疑者たち。そして、とどめはやっぱりおつやちゃん。

「そんな男はいやしないんですよ・・・」

時代劇アイドル編・武田京子

「自分の亭主を殺した恐ろしい女の言い逃れ・・・」

時代劇アイドル編・武田京子

「誰が真に受けるもんですか!」

時代劇アイドル編・武田京子

そうだそうだ、の大合唱に「金さん、金さん、かぁ・・・」と呟いてから「いい加減にしろよぉ?こら悪党ぅ!」と凄む金さんに息を呑むお芝居の武田京子ちゃん(とその他の容疑者たち)。

時代劇アイドル編・武田京子

「あの晩、見事に咲いたお目付桜、夜桜を・・・まさか汝(うぬ)ら・・・見忘れたとぁ、言わせねぇぞ!?」と桜吹雪の御開帳。

て~ってれ~てれ~♪

時代劇アイドル編・武田京子

て~ってれ~てれ~♪笑

一同「・・・!」

時代劇アイドル編・武田京子

そして金さんに斬りかかった和崎氏が蹴り倒されるシーンの背景に登場してから・・・

時代劇アイドル編・武田京子

「終生遠島」の判決を喰らって(そこまで悪い事したかな?)、出番の終わる京子ちゃんなのでした。

 

歴代ミス映画村(とか準ミスまで入れても)の錚々たる面々の中に合って、最も華やかさを感じさせる美形女優であった事は疑う余地のない武田京子ちゃん。とにかく笑顔がキュート!まさにアイドル! 何と言うか(NHKの朝の連ドラまで進出した加納みゆきさんなんかとは違って・笑)お芝居の凄味とか深みとか、そういう所で勝負される女優さんではなくて、シンプルに「画面に登場すると、ついつい見入ってしまう」可愛らしさで魅せるタイプの女優さんでした。

なので、このおつや役はどうにも腹にストンと落ちて来ないというか・・・ とにかく武田京子ちゃん、終始かわいいんですよね・笑 惚れた男の女房なんて殺してしまえと思えるような性悪女にしては、デートへの誘い方ひとつとっても幼さ(純粋さ?)が残っているというか、「女の子」感がビンビン伝わって来るので、どこか爽やかな青春ドラマの1シーンを観ているような、むずむずした気分になってしまいます。まぁそれこそが「時代劇アイドル・武田京子ちゃん」の底知れぬ魅力だと言う事なんですけれども。

このおつやちゃん役、どうしても東映専属からしかキャスティング出来なかったんだとしたら、太宰由美子ちゃんとかでよかったんと違いますかね・笑