時代劇アイドル編・鈴川法子/三匹が斬る! 第5話:空っ風 可愛い女の恨み文字(制作/テレビ朝日・東映)

時代劇アイドル編・鈴川法子/三匹が斬る! 第5話:空っ風 可愛い女の恨み文字(制作/テレビ朝日・東映)

東映京都の大部屋女優にあって随一の演技力と美貌を誇った鈴川法子さん。安定感抜群のお芝居に加え、お上品なお顔立ちとファッションモデル顔負けのスラリとした素晴らしいプロポーションで、通行人役として登場するだけでも画面映えのする、何と言いますか、大部屋女優としては異様に華のある女優さんでした。

大部屋では男優さんよりも女優さんの方が圧倒的に少ないからでしょうか、武家、町人問わず女役として、80年代半ば以降に東映京都で撮影されたありとあらゆる時代劇に出ずっぱりの感すらあった法子さん、出演作を挙げると本当にきりがないのですが、今回は、テレビ朝日系列で放送された「三匹が斬る!」シリーズ初期の作品のなかから、わずか1分あまりの出演ながら、余すところなくその魅力を見せつけてくれた宿場女郎役のシーンから。

 

毎年、家康の命日(例大祭)に朝廷から下される御幣を日光東照宮に届ける「例幣使」を務める中納言・一條伴成(西田健)らが、前年に奉納され既に用済みとなった古い御幣をバラバラにカットしたうえで、そのカット片を朝廷の意向を笠に近隣の大名や町家に高値で売りつけるという金儲けを思いつきます。

法子さんが登場するのは、どうやら一行が本陣を構える倉賀野宿の女郎屋にまで問題のカット片が売りつけられたと見えて、「お母さん(=女郎屋の女主人)」に十日分の稼ぎにあたる一分を徴収される羽目になった遊女たちが、提灯屋の軒先で達磨売りに勤しむ陣内(春風亭小朝)を相手に愚痴をこぼしているシーン。

画面左端の法子さんを除いて左から藤田佳美さん、和田かつらさん、奈波登志子さんが口々に不満を訴えるなか、シーン前半はセリフがない法子さん。

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商品の達磨を手に取りつつ・・・

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奈波さんの愚痴に聞き入ったり・・・

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お気に入りの達磨に・・・

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変顔してみたり・・・笑

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画面が切り替わってからは法子さん怒涛のセリフラッシュ。

「でもさぁ・・」

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「あのお公家様見ただろう?」

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「色が白くてのっぺりしてて・・・」

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「ちょっとこの達磨さん売りみたいだけど・・・」

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「品が違うね!」

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「あっちは品があるねぇ~」

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とまで言われて黙ってられない陣内さん。

「こらこらこら。あのな、あれが品があるんだったらオレなんざ品が褌して立ってるようなもんだよ」とやり返すのですが。

「あゃーははははっ!」と指をさして笑う失礼な法子さん(笑)

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さらには「何だ、こんなゴミ!」と藤田さんの手にする三方に恭しく乗せられた御幣(のカット片)をフーフーして地面に吹き落とす陣内と・・・

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「やーーっ」と悲鳴を上げて拾い上げるや「このバチ当たり!」と噛みついて・・・

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慌てて埃を払う法子さん。

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最後に・・・

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「ベー」をして・・・

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他の3人と共にその場を後にする法子さんでした。

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このシーンに登場する法子さん以外の3人はれっきとしたゲスト女優で、いわゆる大部屋女優は法子さんだけだと思われるのですが、最も堂々としたお芝居を披露されているのは、むしろ法子さんの方ではないでしょうか。

セリフのないところで手にした達磨に向かって変顔をするシーン。このような台本で指示されているのかされてないのか分からないような「いかにも」な演出は、下手な役者さんがやるとわざとらしさが鼻につくばかりか、あまりの「クサさに」セリフを喋っているほかの役者さんのお芝居をいたずらに「食ってしまう」ものなのですが、法子さん、この単純なようでいて実は難易度高と思われる大ワザ(?)を、本当にさり気な~く、ナチュラルにやってのけています。脇役(端役?)としてのお芝居は名人級と言ってよいのではないでしょうか。

カメラアングルが切り替わってからは、まさに法子さんの独壇場ですね。そもそもアングル自体が法子さんを、と言うより法子さんの美貌をメインに捉えるように計算されて決められているとしか思えませんし、法子さんもそれを知ってか知らでか本当にキュートな表情を交えながらお芝居をされてますねぇ。正直、このシーンの演出では他の3人がただの引き立て役にしか見えません・・・(いや、あくまで個人的な意見ですけど)

メイクも他の3人に比べて洗練されてますねぇ。たぶん法子さんご自身でやられてるんでしょうけど、演出上の指示でそうなっているのか、(時代劇)経験の差なのかはちょっと分かりません。

最後の「ベー」も余裕がないとなかなか出来ないワザだと思います。ここでもやはり全くわざとらしさを感じさせないですねぇ。いやもう、とにかく安心して見ていられます。素晴らしい!

 

このお話、脚本担当は國弘威雄氏。松竹系の必殺シリーズを含む、テレビ朝日系列の時代劇でよくお名前を見かけたベテラン作家さんですね。

87年秋から放映開始された「三匹が斬る!」シリーズ、この頃はまだ殿様(高橋英樹)と千石(役所広司)の関係性も安定しておらず、お話の展開にも試行錯誤のような雰囲気がありましたが、本作でも殿様と千石の見応えある対決シーンが随所に盛り込まれているなど、純粋にお話としても楽しめる佳作だと思います。