時代劇名優一覧(女優編)・山本みどり/続続・三匹が斬る! 第9話:消えた花嫁 悪女が走る風の中(制作/テレビ朝日・東映)

80年代から90年代にかけ、時代劇に似つかわしい美しさと清楚さを引っ提げて、数々のテレビ時代劇へのゲスト出演を重ね続けた山本みどりさん。シリーズ初出演となる、続・三匹が斬る!第4話「お七里のイジメが元で不倫妻」では、凡そその持ち前のキャラクターとは相容れない、旦那の弟と肉体関係を持つ武家の人妻を演じて新境地を切り開いた(?)かに見えましたが、2度目の出演となる本作で演じるのは、老人を誑(たら)し込んで人殺しまでやってのけるという、またしてもみどりさんの既定のキャラとはかけ離れた「悪女」お紋。
話はお紋の輿入れシーンから始まります。中里村の村長(むらおさ)である仁助(川辺久造)や頭数として雇われた殿様(高橋英樹)らに伴われ、呉服太物問屋の豊前屋朝右衛門(山村弘三)の元へ嫁いで来たお紋なのですが・・・。
当然のように花嫁姿も大そう美しいみどりさん。
祝言も終わり、殿様や、空腹で行き倒れているところを朝右衛門に助けられた千石(役所広司)をはじめとする参列者の多くが座敷で酔っ払って寝静まった頃に、朝右衛門に蔵へと案内されるお紋。
いつも帳付けをしているという二階に案内されるのですが・・・
不意に顔つきが変わるお紋。
おもむろに袂(たもと)から扱き帯を取り出して朝右衛門の首に巻き付け・・・
ギリギリギリ・・・
ギリギリギリ・・・
こわいよー。
このシーン、あのみどりさんが人殺し役?と腑に落ちない思いに駆られるところですが、直後に(朝右衛門の子分にあたる)木谷邦臣氏、勝野賢三氏、細川純一氏のやり取りで朝右衛門が盗人の頭領であることを窺わせるシーンが挿入されるので、何となくお紋のキャラ設定が見えて来ます。
それにしても、さすがはみどりさん。人殺しのシーンですらも色っぺー。
さて、お紋は朝右衛門を殺しついでに蔵にあった千両箱を三つ持ち去ったうえ、山国川を船で下って中津の城下を目指します。金を取り返そうと追って来た朝右衛門の子分たちや、お紋をお上に突き出して賞金を得ようとする千石からも逃げ遂せたお紋ですが、ついには殿様に捕まり、町奉行所の役人・竜崎(波多野博)に引き渡されます。
で、番屋で竜崎によるお取り調べのシーンなのですが・・・。
竜崎「理由(わけ)を申せ!」
お紋「・・・」
竜崎「盗んだ金はどこに隠した!?」
お紋「・・・」
いや、これだけのシーンなんですがね。やっぱ色っぺー・笑
で、豊前屋の番頭(中村孝雄)が、実は朝右衛門が頭目を務めた盗人集団「月の輪一味」の小頭で、お紋を奪い返すために木谷氏らを伴って番屋へ乱入、竜崎や小物たちに襲い掛かります。
牢の外の異変に気付くお紋。
番頭「助けに来ましたぜ!おかみさん!」
お紋「番頭さんがどうして・・・?」
お紋さん、半ば強引に番屋の外へ連れ出されたところに千石が登場・・・
お紋さん、今度は番頭を倒した千石に連れ去られるという、事態が二転三転のストーリー。面白いです。
一夜明けて、山道を行くお紋と千石。勝手に千石とは別の道へ行こうとするお紋にキレる千石・笑
千石「どこ行くつもりだ!?」
お紋「中津のご城下」
千石「そこに何があるんだ?」
お紋「私の身内」
千石「最初から金が狙いで豊前屋に近づいたのか?」
お紋「違う」
「じゃ、豊前屋の命が狙いだったのか?」と問われて頷くお紋。
さらに根掘り葉掘り聞こうとする千石に反撃を開始するお紋。
「旦那?旦那は何で私のこと助けてくれるんですか?」
千石「端から言ってんじゃねぇか。お前をお上に突き出して金貰うんだよ、オレは」
んで、この表情。
うへー、男殺し!笑
「違うわね。私のことが気になるんでしょ?」
しどろもどろになる千石に「どうして?どうしてなの?」と追い討ちをかけておいてからの・・・
「私のこと、放っといて下さいよ、これ以上、私に関わると、ろくな事になりませんよ・・」
みどりさん、男女の駆け引きを心得た、まぁ言ってしまえば「スレた女」を演じるのもなかなか珍しいと思うんですが、決して過剰なお芝居に走ることなく、ごく自然に演じてのけてますよねぇ。美しいだけでなく、やはり演技においても実力派中の実力派!
で、観る者に、お紋、やるねぇ、と思わせといて、一転、今度は千石が反撃に出るんですねー。これ、やっぱ脚本もいいわ。
千石に「そうか。お前がそれほどまで言うなら、手を引く」と突き放され、茫然とするお紋。
お紋「待って!」
千石「何だ?」
お紋「うん・・・」
キュートォォ!!
しかしその後の言葉が続けられず、スタスタ行ってしまう千石を見送るしかないお紋。
仕方なく一人で歩き出したところに、都合よく通りかかる修験者の集団・笑
たまらず・・・
千石の後を追うお紋。
千石に「どうだ?オレについて来てもらいたいか?」と問われ・・・
からの・・・
からの・・・
いや、反則。これはアカん。
田中みな実も真っ青・・・。
さて、その後、山道で「月の輪一味(※さっきの修験者ではありません)」に襲われた際に勝野氏の放った吹き矢が左腕に刺さり、毒が身体に回った千石は動けなくなります。
こういうシーンは定番。
ついでに千石が急に寒がり出したので・・・
これも定番。
前作に続いての、みどりさんの麗しい襦袢姿・笑
身体をさすっているうちに寝入ってしまった千石に、月の輪一味への復讐に至った経緯を話し出すお紋。
実は千石さんは全部聞いてました、というのもよくあるパターンですが・・・
「金はどうするんだ?」と聞かれ、涙ながらに、死んだ亭主の船を買い戻して倅を立派な船長(ふなおさ)にするんだ、と答えるお紋。
船長をしていたお紋の亭主は、泊まっていた料亭に押し込みに入った月の輪一味に殺された挙句、何十年もかけてやっと手に入れた船も人手に渡ってしまいます。母親に倅を預けて亭主の仇討ちのため旅に出たお紋は、朝右衛門が月の輪一味であることを突き止めて復讐をし、そして亭主の船を買い戻したい一心で豊前屋の蔵から金を盗み出したのでした。
千石に「早くおっ母さんと倅んとこに帰んなきゃな・・」と言われ、初めて笑顔を見せながら頷くお紋。
そして翌朝、ようやく母親の家に辿り着いたお紋ですが、そこには千石を激怒させる悲劇が待ち受けているのでした。
あの山本みどりさんが、のっけから凶悪な人相で老人をギリギリ帯で絞め殺すシーンもなかなかインパクトがありましたけれども、物語中盤に千石との間で交わされる男女の駆け引きのシーンなんかは、清純派女優・山本みどりの、これまでとは違った「いい女」っぷりを見せつけてくれた名シーンだと思います。それにしてもあのブリっ子シーンは演出の指示なのか、みどりさんご本人の意思によるものなのか、非常に気になるところです。
さて本作の脚本、たまたまなのかは分かりませんが、前回に続いて和久田正明氏。軽妙なテンポ、深い人物描写、その先がどうなるのか簡単には読めない練り込まれたストーリー展開、本作でも手堅さ十分の仕事ぶりで観る者を楽しませてくれています。川辺久造氏演じる仁助が「月の輪一味」の真の頭目なのは、物語開始1分もしないうちにそのキャスティングから一発で分かってしまいますが・笑、ここ、もう少し意外性のある配役がされていれば、もっと面白い作品に仕上がっていたかもしれませんね。
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