時代劇アイドル編・田中綾子/八百八町夢日記(第1部) 第7話:闇の顔役(制作/ユニオン映画 制作協力/東映太秦映像)

時代劇アイドル編・田中綾子/八百八町夢日記(第1部) 第7話:闇の顔役(制作/ユニオン映画 制作協力/東映太秦映像)

暴れん坊将軍シリーズでお馴染み、北島三郎さん演じるめ組の頭・辰五郎の姪っ子・おちよ役で知られる田中綾子さん。め組では基本的にお笑い担当の扱いで、新さんが女性と絡むたんびにやきもちを妬くか、街中を走り回っては柱に顔をぶつけて鼻血を出していましたが、ごくたま~に他のテレビ時代劇にもゲスト出演なさってました。

で、何と言っても丸顔で童顔が魅力の綾子さんですから、どこか精神性に幼稚・・・少女のような可憐さが漂うおちよのキャラは実にハマり役だったと思うんですが、他の作品に出演されると綾子さん、おちよとは全く違った、なかなか色気の溢れるお芝居をされるんですね。本作では、茶屋の主の抜け荷を手伝っている船宿の女将・お銀を演じておられます。

 

深川永代町の岡っ引・加助(渡辺成樹)夫婦が何者かに殺害され、加助の家から、やぐら下の茶屋・丁字屋の箸紙が発見されます。丁字屋の内偵に向かった三郎三(風間杜夫)からの報告で、主の清兵衛(高野真二)が新内をたしなむと知った榊原(里見浩太朗)は、おりん(中原理恵)と共に新内の謡い手に扮して丁字屋へ。

清兵衛の座敷へと呼ばれた夢さん、おりんの弾く三味線をバックに、清兵衛や、清兵衛の仲介による抜け荷で大儲けをしている唐物屋(笹悟朗)と薬種屋(広岡善四郎)の前でご自慢の喉を披露。

「男のぉ~肩ぁにぃ~、追いぃ~すがぁり、身をぉ~~・・・」のとこまで廊下で聞き入ってた綾子さんが満を持して障子をガラリ。

時代劇アイドル編・田中綾子

さらに「おぉ~~~・・・」を引っ張る夢さんと聞き入る一同。

時代劇アイドル編・田中綾子

「おぉ~~~、震るぅ~~わし、てぇ~~泣きぃ~~、いたぁ~~ぁるぅ~~」まで歌って夢さん、「お粗末でございました」

唐物屋さんと薬種屋さんが夢さんの喉とおりんの三味線を絶賛するのに続いて、しっとりと感想を述べる綾子さん。

「ほんと。途中から廊下で聞いていたけど、あんまり切なくて、つい泣かされちまいましたよ」

時代劇アイドル編・田中綾子

綾子さんの方を見て「こちらは?」と尋ねる唐物屋さんに、清兵衛が慌ててお引き合わせ。

「お銀でございます。立花という船宿をやっております」

時代劇アイドル編・田中綾子

「ほぅ、船宿を・・・?」「なぁるほど、それで品物を船で自由に・・」と夢さんの前で抜け荷のカラクリをペラペラ喋る唐物屋と薬種屋。

で、唐物屋に「あの二人に盃をあげておくれ」と依頼され・・・

時代劇アイドル編・田中綾子

大変美しい所作でお酒を注いでみせる綾子さん。

時代劇アイドル編・田中綾子

ここは大人の色気が少々・・・。にしても時代劇慣れしてますね~、さすがは暴れん坊将軍のレギュラー陣。

話が弾んで、いつしか夢さんが、おりん(扮する三味線弾き)との馴れ初めを語り始めるのですが、小間物屋だった自分が芸者のおりんに入れあげた挙句、店が左前に、という、ありがちな転落エピソード。

で、「金欲しさに焦って抜け荷の品に手を出したのが大間違いで・・・」と言われて顔色が変わる綾子さん。

時代劇アイドル編・田中綾子

さらに、唐物屋と薬種屋の顔に見覚えがある、と一発カマしたうえに「間違っても抜け荷の品に手を出しちゃいけませんぜ」と二人に忠告する夢さんを不安そうに見守る(お芝居が細かい)綾子さん。

時代劇アイドル編・田中綾子

夢さんの「そりゃ、儲けは大きゅうございますが、命取りになります」で、さらに動揺の色を隠せない綾子さん。

時代劇アイドル編・田中綾子

で、清兵衛が短筒を持ち出して「てめぇ、いってぇ何モンだ?」から、鉄扇を炸裂させた夢さんが「あばよ」と逃亡、唐物屋と薬種屋がジタバタしながら「町方の手先だったらどうする・・・?」と脅えるのを清兵衛が「あっしの後ろにはね、頼りになるお人がついていなさるんですぜ」と宥めるシーンを経て・・・

「清兵衛さん!前からお願いしてるように、私はもうお役御免にして下さいな」

時代劇アイドル編・田中綾子

「仮にあっしがうんと言ったところで、闇のお頭が、お前さんを手放しはすまい」と清兵衛に突き放されてしまった綾子さんのアップ。

時代劇アイドル編・田中綾子

キュート!

で、慌てた様子で立花に帰って来た綾子さんに・・・

時代劇アイドル編・田中綾子

「もし?女将さん」と声をかける男あり。

時代劇アイドル編・田中綾子

「誰だい?」と尋ねる綾子さんに「実は女将さんの命を・・・お助けしようと思ってね」とちょいとキザな三郎三。

「あたしの命を・・・?」

時代劇アイドル編・田中綾子

んー、やっぱどっか幼妻風・笑

この後、三郎三がお銀を匿うために自宅へ連れ帰るのですが、そこに三郎三の女房・おはつ役の未來貴子さんが登場して、コント紛いの面白さ・笑

 

で、このお話、本来は、六年前に死亡したおりんの父親で北町きっての名同心と謳われた秋山(小笠原弘)が可愛がっていた、演技派俳優・辻萬長氏演じる北町の臨時廻り同心・戸崎小平太が悪の世界に陥るまでの半生を描く哀しい(?)お話で、「闇の四天王」を名乗る黒子姿の四人組の殺し屋の元締めこそ戸崎小平太その人だった、という、なかなか衝撃的なシナリオなのですが、綾子さん演じるお銀は、実はその戸崎の愛人だったという事実が最後の最後に発覚するんですね。

「愛人」にしてはスレてないと言うか、健全な色っぽさを漂わせつつ、むしろその表情にはあどけなさすら残る綾子さん、そのミスマッチな感じだけでも「愛人」として高ポイントなのに、本当は足を洗いたいのに洗えないなんて、どことなく漂う従順さがまた輪をかけて世の殿方には堪らない。そんな綾子さんならではの、従来の時代劇にはない新しい愛人像を見事に体現しておられるのではないでしょうか。

いや、まぁ「何か愛人っぽくないよね?」と言われてしまえばそれまでなんだけど。