時代劇名優一覧(女優編)・三浦リカ/八百八町夢日記(第2部) 第14話:うたかたの晴れ着(製作/ユニオン映画 制作協力/東映太秦映像)

時代劇名優一覧(女優編)・三浦リカ/八百八町夢日記(第2部) 第14話:うたかたの晴れ着(製作/ユニオン映画 制作協力/東映太秦映像)

地味ながら整った顔立ちと弾けんばかりのチャーミングな笑顔、加えて確かな演技力で80年代以降のテレビ時代劇というテレビ時代劇をジャックするかのごとく、ゲスト女優として引っ張りだこであり続けた名脇役・三浦リカさん。凛としたお武家の妻女からずーずー弁の百姓娘まで幅広い役柄を事もなげに演じてみせ続けた希代の名女優と言っても過言ではありませんが、本作で演じるのは、亭主に浮気をされた挙句、二人の子供を抱えて実家に戻って来た、しっかり者の妹とは対照的にどこかヌケててお調子者の長屋の女・お政。特にお話の前半で見せて下さる酔っ払い女の醜態を再現したお芝居は必見です。

 

本町二丁目の酒問屋・伏見屋(疋田泰盛)が、灘の造り酒屋を騙る男四人組の詐欺集団に百両騙し取られた挙句、用心棒の浪人(笹木俊志)共々殺害されるという事件が発生するなか、元とび職の父・杢兵衛(穂高稔)と、小間物の行商で日銭を稼ぐ妹・おかよ(小林綾子)の住む長屋へ、大きな荷物を背負って子供二人(山下慎司/佐野聖也)と共に帰って来た態で、リカさん登場。

時代劇名優一覧・三浦リカ

「家狭いんだから」外で遊べと子供たちを追い出して・・・

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上がり口に荷物をずでーん。

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杢兵衛の方を振り返って「当分厄介になるわ」

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いつもながらリカさんのキュートな笑顔♪

「また亭主と喧嘩でもしたのか!?」と呆れる杢兵衛に「喧嘩どころか・・・」と、亭主の浮気を理由に離縁したと言うリカさん。

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稼ぎもないのにそっちの方は達者な亭主に「イヤんなっちゃう」リカさん。

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リカさんが演じると、何か行儀の悪さも可愛らしく見えますね・笑

 

夜。おかよに連れられてえんまにやって来たリカさん。

「いい店じゃないかぁ」とご満悦。

時代劇名優一覧・三浦リカ

「あんまり遅くならないようにね」と言い残しておかよは帰宅。リカさんはお酒と刺身をオーダーして、ここまでは平和な店内。

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グビグビ・・・

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「うーへーえひーん(泣)」

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「子供二人も抱えちゃって、どうしたら・・・」と呑んでるうちに将来が不安になって来たリカさん・笑

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若い女なんぞすぐに飽きるんだから「辛抱すりゃよかったんだよぉ!」と三郎三(風間杜夫)は言うのですが・・・

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若い女の方がいいに決まってる、と身も蓋もない事を言い出すお杉(中村綾)を「何なのよ、あんた」と、これまた何とも言えない表情で見上げるリカさん・笑

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「そんな悪い亭主、三行半が当たり前よ!」と助け船を出すおつや(中田喜子)にお酌・・・

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自分のにも注ごうとするが、もうお酒がありません。

時代劇名優一覧・三浦リカ

「う・・ない・・お酒ない」「ない~・・・」と心から悲しげなリカさん・笑

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泣き上戸のお芝居、ここまでわざとらしさを感じさせずナチュラルにやってのけられる女優さんが一体どれほどいると言うのか・・・。

で、今度は店を替えて陽気に騒いでいると・・・

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お銚子片手に話しかけて来るのは、伏見屋から金を騙し取った直参旗本・相良錦之助(菅貫太郎)率いる詐欺集団の一味で、役者崩れの中村七之丞(津村鷹志)。

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注がれたお酒をペロンと煽って「あー、美味ぇ」の小芝居を忘れない(演技の細かい)リカさん・笑

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そこで満を持していよいよ本題に入る七之丞。

七之丞「妹さんなんかいらっしゃる?」
お 政「妹・・・?」

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件の詐欺集団、伏見屋の次は唐物問屋の三州屋(和田昌也)から見合い話を餌に支度金を騙し取ろうと計画しており、三州屋の跡取り・房吉(牧村泉三郎)とニセの見合いをさせるために年頃の娘を探していたのでした。

そんな事とはつゆ知らず、翌日、七之丞に頼まれるがままにおかよを引き合わせるお政(シラフ)。

時代劇名優一覧・三浦リカ

七之丞「よく来てくれましたねぇ」
お 政「妹の、かよです」

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七之丞「純朴で綺麗な妹さんだねぇ」
お 政「私に似てるでしょう?」

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愛想笑いするしかない七之丞・笑

で、「あのぅ・・・どんなお話でしょう?」と不安げに尋ねるおかよに「こんなお願い、不躾(ぶしつけ)で何なんだけど・・」と、ある大店のお嬢さんの代わりに見合いをしてくれと言い出す七之丞。

さすがのお政もたまらず「それ、どういう事なんです・・・?」

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そのお嬢さんには他に好きな人がいて、などと、もっともらしい作り話をする七之丞にあっさりと「あ~、よくある話ですねぇ」とイチコロのお政ですが・笑、お姉さんより余程しっかり者のおかよは、七之丞が差し出した礼金には目もくれず「失礼します!」と逃亡。

時代劇名優一覧・三浦リカ

「おかよ!」と呼び止めようとするも、後を追うことは出来ないお政。

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予期せぬおかよの反応に戸惑いながらも、「お前さんから口説いて下さいな、ねっ?」と強引な七之丞に頼み込まれ、断り切れずに礼金を受け取ってしまうお政。

時代劇名優一覧・三浦リカ

リカさん「困ったなぁ~」のアップ。

時代劇名優一覧・三浦リカ

この場面のお芝居もナチュラルでいいですね~。七之丞への信用と不信感が入り乱れるという、なかなか難しいシーンだと思うのですが、リカさんにかかれば赤子の手を捻るが如し。

 

さて結局、少額とは言え「あちこちに借金がある」姉を助けるために、七之丞(て言うかお政)の頼みを引き受けることにしてしまったおかよ。一味は、おかよを紀州のお大尽・大和屋の娘に仕立てて房吉と見合いをさせ、まんまと三州屋から五百両を騙し取ります。数日後、おかよは番屋に突き出される羽目に・・・。

親父にシバかれ・・・

時代劇名優一覧・三浦リカ

おつやにも詰られ、ショボーンなお政さん。

時代劇名優一覧・三浦リカ

しかし七之丞を見つけ出す助っ人を買って出た三郎三と共に賭場に張り込み・・・

時代劇名優一覧・三浦リカ

ついには七之丞を見つけ出して大暴れ・笑

時代劇名優一覧・三浦リカ

それをきっかけに北町奉行・榊原(里見浩太朗)が一味を成敗、おかよも放免となり事件は一件落着。お政さんは杢兵衛やおかよに見送られ、「どうしても戻ってくれ」と手を付く亭主の元に意気揚々と帰って行ったのでした。めでたしめでたし・・・。

 

このお話、脚本は70年代から「桃太郎侍」「松平右近事件帳」「長七郎江戸日記」と、日本テレビ枠の時代劇で名作を量産し続けた和久田正明氏。酒にも金にもだらしなく、どこか思慮の足りない姉という対称的なキャラを絡ませて、世界の「おしん」・小林綾子女史が演じればこその親孝行、姉思いな妹・おかよの人としての誠実さ、堅実さを見事に浮かび上がらせていますが、そんなシナリオも「ちょっとダメ姉」なお政を見事に演じ切るリカさんの演技力なくしては成立しえなかった事でしょう。三浦リカさん、物語に応じた変幻自在の役作りによって相手役の魅力を引き立て活かすお芝居もできる、本当に素晴らしい女優さんだと思います。