時代劇名優一覧(女優編)・石倭裕子/長七郎江戸日記(第3部) 第2話:姉妹かんざし(製作/ユニオン映画 制作協力/東映太秦映像)

時代劇名優一覧(女優編)・石倭裕子/長七郎江戸日記(第3部) 第2話:姉妹かんざし(製作/ユニオン映画 制作協力/東映太秦映像)

グラビアや写真集での脱ぎっぷりの良さが魅力だった石倭裕子さん。ゴージャスなお身体だけでなく、その演技力もなかなかのもので、テレビ時代劇でよくお見かけするようになったのは80年代の終わり頃だったと記憶していますが、善良な百姓娘から人殺しも辞さない悪女役まで、幅広いキャラクターを自然に演じてのけることの出来る、印象深い女優さんの一人でした。

本作では、幕府の元目付が小梅村の妾宅に囲っていた妾・小せんを演じる裕子さん。特有の色気をむんむん撒き散らしながらも唯それだけに留まらず、感情を表に出すことなくいつも不敵な薄ら笑いを浮かべているような、ちょっと余人には表現できない妖しげなお妾さんを、ブレることなく最後まで演じきっておられます。

 

妾宅で「頓死」した元目付役で二千石の旗本・綱木弥左衛門の四十九日も明け、妾宅を料理屋に改装中の小せん姐さん。

時代劇名優一覧・石倭裕子

他の職人たちがお茶休憩に行くなか、襖職人の尚古堂利助(渡浩行)に声をかけられる小せん姐さん。

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襖の裏に隠してあったと言って「金成木」と書かれた紙包みを渡され「キン、セイ、ボク・・・?」と口に出して読みあげるも、「金の成る木って読むんじゃないですか?」と襖職人にさらっとツッ込まれる小せん姐さん。

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慌てて中を調べると・・・

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謎の帳簿。

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小せん姐さん(滝沢カレン似)、いいモノを見つけてしまいました・笑

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すぐさま駕籠を呼んで廻船問屋・鳴海屋に直行する小せん姐さん。

駕籠屋に小銭を渡しながらエロい口調で「ご苦労さま」

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こっちはブルゾンに似てるな・・・

舶来品と思しき調度の揃った部屋に通され、旧知の間柄らしき主の吉蔵(睦五朗)と対面。挨拶もそこそこに「お妾なんて肝心の殿様が亡くなってしまったら、そりゃぁ惨めなもんでござんすよ」とボヤきが入る小せん姐さん。

「御本宅では・・・まるで私が殺しでもしたように罵られ・・・」

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と涙していたかと思ったら、けろっと復活する逞しい小せん姐さん・笑

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「女ひとり・・・これから、どうやっておまんまを食べて行こうかと、さんざ思案の末・・・」と料理屋開店構想をぶち上げる小せん姐さんなのですが・・・

「で、ね・・・」

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半分面倒くさそうに話を聞いている吉蔵に、「縁起直しも兼ねて」襖を全部張り替えた話をした後、意味ありげな間を置く小せん姐さん。

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「するとね、旦那・・・」

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「寝間の襖の下張りの中から、障子屋さんが妙なものを見つけたんです・・・」

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「旦那とある御方に関わる、のっぴきならない書付け・・・と言ったら・・・」

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顔色が変わる吉蔵にとどめの一撃。

「お心当たり、おあり?」

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このシーン、一見、裕子さんのお芝居、あんまり上手くないんです。特に泣きまねのあたりとか・・・。しかしほかの作品でのお芝居を見ていても、決して下手な女優さんではないんです。だから泣きまねの「わざとらしさ」は、「わざとらしい」泣きまねをする小せんを、あえて演じているのだろう、という推測が成り立ちます。むしろ、その「わざとらしさ」をわざとらしくなく(分かりにくい・・・)演じられているところが素晴らしい。

その後に続くお芝居全般についても、セリフに変な抑揚が入る一方で、かと言ってその時々の小せんの心情が分かりやすく表現されているわけでもない。しかし、これも小せんというキャラクターを解釈したうえで、あえてそのように演じているのだとすれば、ただの「お色気女優」の域を超えた、裕子さんの侮れない実力のほどが分かろうというもの。

 

で、問題の書付けは、吉蔵の抜け荷品売買を勘定奉行の鏑木能登(外山高士)が仲介した証拠となる受取証文で、それをネタに三年もの間、弥左衛門に強請られ続けていた鏑木は、殺し屋・弥平次(石倉英彦)を使って生き証人となりうる利助を殺害するのですが、殺された利助を発見した、利助の幼馴染でもある浪速屋の娘・おはる(立花理佐)も弥平次に命を狙われる羽目に。

調査に乗り出した長さん(里見浩太朗)に、小せんの妾宅を見張るように命じられた辰三郎(火野正平)が妾宅に侵入すると、間のいい事に小せん姐さんはバスタイム。

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ここからは火野氏のナレーション付きで進行・笑

「何でオレこんなに恵まれてんの?」

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「おっ、おっおっおっ・・・」

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「あれ、あれあれあれ・・・」

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「もうちょっと・・・もうちょっと、こっち・・・」

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「桶・・・何でこんなに桶がいっぱいあんだろ・・?」

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ここで小女(河合綾子)登場。

「おかみさん?」

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小女「鳴海屋さんとおっしゃる方がお見えですけど?」
辰 「そんなモン来んな、この忙しいときに」

を挟んで。

「そうかい。すぐ行くからお座敷にお通ししておいとくれ」

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の後、小せんがザバーッと立ち上がる寸前に画面が火野氏のアップにチェンジ。「大人の世界・・・」と呟いてノックアウトされる辰三郎さんでした。

 

さて、鳴海屋さんの用事は、鏑木が問題の書付けを五百両で買い上げるほか、小せんを自分の妾にする、というもの。書付けを渡したら「障子屋さんの二の舞でバッサリ、なんて事はないでしょうね?」と一度は警戒するものの、吉蔵にうまい事言いくるめられて、共に鏑木の屋敷に乗り込む小せん姐さん。

目の前に五百両を積まれて「ありがとうござんす」

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そして小せんから受け取った問題の書付けをその場で灰にした鏑木。「さて、これで互いに、枕を高くして眠れるというものだが・・・」

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鏑木「小せんとやら」
小せん「はい?」

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鏑木「お前もゆっくり眠ってもらおう・・・(志村、後ろ!状態)」

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鏑木「二度と覚めない、深い眠りにな・・・」

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で、弥平次に殺されかかったところで長七郎公(ぎみ)が登場して一度は命拾いするものの、ラス殺陣の最中に哀れ弥平次の毒牙にかかり・・・

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その生涯を終える小せん姐さんなのでした。

 

実はこのお話、さほど裕子さんの出番が多いわけではありません。タイトルにも「姉妹かんざし」とあるように、そもそもは長さんが居候する日本橋の口入屋・浪速屋の娘である、おなつ(東ちづる)とおはるの姉妹を軸に、二人の父親である主人・喜久蔵(芦屋雁之助)も絡めて事件が展開していく、言わば「家族の絆」をテーマとするお話なのですが、その妖艶な色気とむちむちボディーを武器とする「小せん」のパンチが効き過ぎていて、そっちの話は全く頭に入って来ないですね・笑