時代劇名優一覧(女優編)・石倭裕子/長七郎江戸日記(第3部・スペシャル版):長七郎の陰謀(製作/ユニオン映画 制作協力/東映太秦映像)

時代劇名優一覧(女優編)・石倭裕子/長七郎江戸日記(第3部・スペシャル版):長七郎の陰謀(製作/ユニオン映画 制作協力/東映太秦映像)

グラビアや写真集での脱ぎっぷりの良さが魅力だった石倭裕子さん。ゴージャスなお身体だけでなく、その演技力もなかなかのもので、テレビ時代劇でよくお見かけするようになったのは80年代の終わり頃だったと記憶していますが、善良な百姓娘から人殺しも辞さない悪女役まで、幅広いキャラクターを自然に演じてのけることの出来る、印象深い女優さんの一人でした。

本作では、長七郎の偽物を仕立てて謀反騒ぎを起こし、その謀反から将軍・家綱(若菜孝史)の危機を救うことで家綱の寵愛を取り戻そうと画策する元大老・酒井忠勝(金田龍之介)配下の忍び集団「黒部党」のくの一・吹雪を演じる裕子さん。独特なメイクの効果もあって、得も言われぬ妖艶さを漂わせつつ、ちょっと余人には体現できないクールな女忍者を演じておられます。

 

まずは登場シーン。

オープニングテーマ終了直後、亡父・忠長(長谷川哲夫)の三十周忌に駿河へと向かう長七郎(里見浩太朗)の行く手に、報謝を呼び掛けるみすぼらしい巡礼姿の女あり。

時代劇名優一覧・石倭裕子

長七郎「報謝進ぜよう」
女「ありがとうございます・・・」

からの・・・

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いきなり凶悪な人相の裕子さん登場!

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裕子さん、女性としては比較的低めのトーンの声をされていますが、このシーン、女が報謝を呼び掛ける声が別人のように高く、かつ弱々しいんですね。観てるこっちは、まさか裕子さんだとは気づかない。まぁ声だけ吹替えなのかもしれませんが、もしご本人なのだとしたら、声を使い分ける技術が超人的・・・。

で、周囲にいた飛脚姿や旅姿、百姓姿の面々(青木哲也氏、小峰隆司氏、本田陵氏、藤沢徹夫氏、細川純一氏、小谷浩三氏、杉山幸晴氏)が長七郎の周りを取り囲みます。

吹雪「お静かに願います。長七郎公(ぎみ)」

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一瞬の隙をついて吹雪の刀を払いのける長七郎。そのまま斬り合いとなるのですが、さらに黒装束の集団と共に現れた黒部党の頭目・左紋次(磯部勉)に行きずりの少女を人質に取られ、長さん万事休す。

吹雪「言うとおりになされませ。長七郎公(ぎみ)」

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しかし今回の裕子さんのメイク、いいですねぇ~!特撮モノの女ボスみたいな、いつもとは全く異質な色気がむんむん漂っててタマらん!

さて、黒部党の面々に拉致され、酒井の別邸に監禁されていた長七郎は、宅兵衛(下川辰平)、青目(国広富之)、喜久蔵(芦屋雁之助)らの活躍によって救出されます。酒井は長七郎の駿府入りを阻止するべく、吹雪に命じて後を追わせます。

駿府への道中、山道で待ち伏せていた吹雪らに気付いて山中の馬小屋へと逃げ込む長七郎一行。

吹雪「袋のネズミだ」

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にしてもエロそうな忍者だなー・笑

そして配下の忍びたちに号令をかける女リーダー・裕子さん。

「かかれ!」

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忍びたちが小屋に突入しようとしたところで小屋から猛然と駆け出す「長さんに扮した」青目の駆る馬。

吹雪「逃がすな!」

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安定したフォームで忍者走りを披露する北村明男氏(右端)の後ろを、必死の形相で走る裕子さん。

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駆けっ子はあまり得意ではない様子ですが、却ってその走る姿が色っぽい・笑

別アングル。

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おぉっ、こっちはカッコいいぞ!

馬を下りた「長さんに扮した」青目を追い・・・

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文字通り崖っぷちに追い込んだ吹雪。

「長七郎公(ぎみ)、もはや逃げられません」

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しかし笠を取って「ハハハハ」と大笑いする青目。

吹雪「お前は・・・!」

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そのまま崖から川へ飛び込む青目。

吹雪「おのれ・・・!」

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この一連のシーン、裕子さん、ひたすら(エロ)カッコイイですね。おいしいとこ全部取り!

 

一方、宅兵衛と共に無事、駿府入りした長七郎は、たまたま駿府にいたおれん(野川由美子)や、長七郎の身を案じて江戸から後を追って来た辰三郎(火野正平)、おはる(立花理佐)と合流、酒井が駿府に送り込んだ自分の偽物(里見浩太朗=二役)が、元家老の大山勘左衛門(佐藤英夫)をはじめとする忠長の元家臣、十数名を集めて江戸へ向かったことを知ります。

酒井の企みの全貌が分からぬまま、大山らを追って江戸へと引き返す長七郎一行を、またしても黒部党が待ち伏せして襲撃。

立ち回りシーンでは刀を構えて動き回ってるだけで、手持無沙汰な裕子さん(右から三人目)。

時代劇名優一覧・石倭裕子

そこへ馬に乗った青目が乱入し、ひとまず退散する黒部党。

一瞬だけアップになる裕子さん。

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青目と相談のうえ、ひとり別行動をとることにした長七郎を三度(みたび)、待ち伏せのうえ襲撃して来るしつこい黒部党。

左紋次とペアでアップ。

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配下に命じて長七郎が逃げ込んだ小屋に火矢を射込ませる左紋次の脇で、不敵な笑みを浮かべながら小屋を見やる吹雪。

時代劇名優一覧・石倭裕子

燃え盛る小屋を・・・

時代劇名優一覧・石倭裕子

再び不敵な笑みを浮かべながら見やる吹雪。

時代劇名優一覧・石倭裕子

不敵な笑みと言えば不敵な笑みだが、どこか観音様のような柔らかい表情で、何だか優しいお姉さんにも見えて来た。

全焼して崩れ落ちた小屋に駆け寄り「長七郎公(ぎみ)は死んだのだ!」と独りごつ左紋次に頷く吹雪(小島奈津子アナ似)。

時代劇名優一覧・石倭裕子

もちろん小屋では事前に青目によって抜け穴が掘られており、無事に生還する設定の長さん。この後いよいよ千代田のお城でニセ長七郎や酒井と最後の対決となるわけですが、裕子さんは暫く出番なし。

 

ラス殺陣で、酒井にこの陰謀を持ちかけた元大目付・北村右京之介(大出俊)や左紋次が長七郎に成敗され、吹雪は事の顛末を報告に酒井の屋敷へ。

「大山たちには何も知らせず、全てをご自身一人の胸に収めるおつもりでございます」

時代劇名優一覧・石倭裕子

(本物の)長七郎が、元家臣たちが惨めな気持ちを味わわずに済むよう、ニセ長七郎の存在そのものをなかった事にしたというお話ですね。

酒井「(長七郎は)相変わらずの人情家よのぅ・・・吹雪」
吹雪「はっ」

時代劇名優一覧・石倭裕子

酒井「消えろ」
吹雪「・・・はっ」

時代劇名優一覧・石倭裕子

潜り戸を閉め・・・

時代劇名優一覧・石倭裕子

そのまま静かに立ち去る裕子さんなのでした。

 

第1部と第2部のスペシャル編では、長七郎の剣の師であり幕府の大目付でもある柳生宗冬役で(第1部の「海を渡る五十万両」を除いて)皆勤賞だった丹波哲郎氏が、第3部では降板。代わりに元大老・酒井忠勝役ということで、金田龍之介氏がスペシャル編の2話に渡って起用されたのですが、そもそも徳川の安泰と柳生の権勢を天秤にかけながら権謀術数を仕掛ける策士・宗冬と違って、私心ベースのみみっちい企てに終始する設定の酒井役ということもあってか、丹波氏と比べると金田氏、これと言った見せ場もないまま上辺だけのお芝居に終始していた感が否めませんでした。ヨロキン版の「子連れ狼」で演じた阿部頼母があまりに強烈過ぎて・笑、期待値が上がり過ぎてしまったってのはあるんでしょうが・・・。

そんな中、柳生のくの一を演じた佳那晃子さん(あかね役)、高木美保さん(お銀役)に匹敵するポストとなる、黒部党のくの一・吹雪役に抜擢された裕子さん。放映当時は「このまま(あかねやお銀のように)レギュラー入りか?」と期待したのですが、残念ながらレギュラー入りは叶わなかったばかりか、次のスペシャル編「虫ケラ一匹なればこそ、最後の剣舞い」では知らぬ間に栗田陽子さんにチェンジされてて、「あーあ」って感じだったのはここだけの話。栗田さんも素敵な女優さんなのですが、くの一にしてはお上品というか洗練され過ぎというか、裕子さんと比べると忍者特有の泥臭さみたいのが、ちょっとね・・・。

 

さて、このお話、例によって脚本は小川英氏と胡桃哲氏のゴールデンコンビ。スペシャル編で長さんのコピーが出て来るのは第2部の「ふたり長七郎 京の舞」に続いて2度目となりますが、あっちはただのマスクだったのに比べ、こっちはリアルに瓜二つのニセ長七郎が登場する設定につき、「時代劇スター・里見浩太朗」の貫録、いやいや凄みすら感じさせる、微に入り細にわたる緻密な演じ分けが見応え十分、面白いです。