斬られ役列伝・笹木俊志編/長七郎江戸日記(第2部) 第56話:川開き、大輪の花(制作/ユニオン映画 制作協力/東映太秦映像)

花火問屋の菊乃屋(田中弘史)に公儀の火薬を横流しして私服を肥やす鉄砲玉薬奉行・香月摂津守(深江章喜)の腹心役として登場する笹木俊志名人。この笹木名人演じる強面の武士、エンドクレジットには役名も出て来ませんが、物語を通じて大活躍。香月一味のヒットマンとして剣の遣い手ぶりを惜しみなく披露して下さいます。
序盤、菊乃屋の商売敵、富士屋嘉助(新城邦彦)を殺害するシーン。
嘉助とすれ違いざま「富士屋の主か?」と尋ねる笹木名人。
さらに「嘉助さんかな?」と念押しする笹木名人。
嘉助が「へい、富士屋嘉助でございます」と無警戒に応えるや否や、おもむろに頭上高く抜刀し・・・
片手で嘉助の肩口目がけ刀を振り下ろす笹木名人。
何でもないシーンに見えますが、誤魔化しの効かないゆっくりとしたスピードでの一振りにも関わらず、太刀筋に毛ほどのブレもない点がポイントです。さすがは笹木名人。
さらに倒れた嘉助に跨り・・・
その胸に切っ先をズブリ。
ふらりと通りがかった畑中怜一氏をチラリと見やり、刀を引き抜く笹木名人。
突いて→抜く、という単純な動作も、下手な役者さんがやると刃先がぐらぐらブレるものですが、笹木名人の手にかかると美しく直線を描きます。
最後は逆手で納刀しつつ現場から立ち去る笹木名人。
場面変わって物語の中盤。香月の屋敷の床下に忍び込んで一味の密談を盗み聞きしている辰三郎(火野正平)に気づいた笹木名人。
刀を抜いて畳をブスリ。
残念ながらこの一突きはハズレ。
這う這うの体で屋敷を抜け出した辰三郎を発見、追跡を開始する笹木名人。
恐るべき俊足を活かして逃げる火野氏と追いかける笹木名人。
「しつこいなぁ~」と困惑気味の辰三郎をどこまでも追いかける笹木名人(笑)
疾走する火野氏を笹木名人がしつこく追いかけるというシチュエイション、似たようなシーンが「新松平右近」でもありましたね・・・。
それにしてもさすがは笹木名人、走っている最中も上半身がブレません。腰を落としたまま走ることがお出来になるからですね。しかも火野氏に劣らず足が速い(笑)大柄ながら運動能力の高い役者さんだと思います。
と、そこへ通りがかる長七郎(里見浩太朗)一行。辰三郎はすかさず「助けてぇ~!」と長七郎の背後に逃げ込みます。
長七郎に切っ先を向けながら「その者を渡してもらおう」と凄む笹木名人。
「断る」と歯牙にもかけない長七郎ににじり寄る笹木名人。
斬りかかって・・・
左手に払われるや否や・・・
水平に一太刀繰り出すが・・・
霞の構え気味に刃を受けられる笹木名人。
腕が伸び切っていてフォームが美しいです。
自ら刀を引いて再度斬りかかるも・・・
さらりと躱され・・・
長七郎の薙ぎ払うような・・・
一太刀を浴び・・・
避けるのが精一杯の笹木名人。
暫し睨み合いの後、逃亡する笹木名人。
長七郎シリーズにおいても福本清三氏と並んで悪の大ボスの腹心役にキャスティングされることの多かった笹木名人。本作でも圧倒的な貫禄と存在感を見せつけてくれます。ラス立ちでは、いまいち不完全燃焼のまま里見氏に斬られてしまったのが心残りではありますが・・・。
本作の擬斗担当は上野隆三翁。ラス立ちでは(笹木名人が斬られてしまった後ですが)終盤にハイアングルからの撮影に切り替わった後のシーンで、里見氏の美しい太刀捌きを堪能できる素晴らしい立ち回りが展開されます。
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