斬られ役列伝・福本清三編/長七郎江戸日記(第2部) 第19話:妻こそ我が命(制作/ユニオン映画 制作協力/東映太秦映像)

旗本寄合席の大和田左内(中野誠也)と結託して口入屋の表看板の裏で殺し屋稼業を営む叶屋市兵衛(穂積隆信)に、頭取の座を争っていた同業の湊屋を殺害させた廻船問屋・浪花屋清兵衛(高城淳一)の飼う用心棒の浪人者役で登場する福本清三名人。ラス立ちでの出番はありませんが、物語中盤の1シーンでプロフェッショナルな斬られ役の神髄を見せつけてくれます。
殺しの代金は五十両だったはずなのに、市兵衛らに騙されて「約定書」をしたためてしまったがために千両を強請り取られる羽目になった清兵衛やもう一人の浪人者(小船秋夫)と共に、取引現場へと向かった福本名人。
市兵衛らから無事に約定書を買い戻した清兵衛、市兵衛らが姿を消してから丸めてゴミにしようとしますが、現場に張り込んでいた長七郎(里見浩太朗)に問題の約定書をまんまと奪われます。
すぐさま長七郎に詰め寄り、鯉口に手をかける福本名人。
そして「刀を鞘ごと倒して」鯉口を切る福本名人。
派手な斬られ方ばかりがクローズアップされがちですが、こういう細やかながら基本的な動作を疎かにしないところにこそ、福本名人のプロフェッショナルぶりがよく現れていると思いますね。中途半端に「殺陣」の出来る役者さんとの「殺陣」に対する姿勢の違いが窺い知れます。
右手を柄にかけ・・・
おもむろに抜刀。
右腕一本で刀を持ち、切っ先を下に向ける「いつもの構え」に移行する福本名人。
ただの抜刀シーンですが福本名人、身体の芯が一切ブレていないのが分かるでしょうか。
里見氏の少々長い台詞が終るや否や真っ向から斬りかかる・・・・・・
福本名人。
身を捻って躱されるや・・・
返す刀で水平斬りを仕掛けるも・・・
腕をとられる福本名人。
じりじりと小船氏の方へと詰めていく長七郎に・・・
やがて身体ごと押しのけられ・・・
その場で身を翻して・・・
抜刀した長七郎に斬りかかろうとするも・・・
刀を払われたうえに・・・
切っ先を突き付けられて大きく仰け反る・・・
福本名人(アバラがセクシー)。
画面右手へと逃げる清兵衛を追う長七郎と並行して移動する福本名人。
先回りしたうえで再度、長七郎に真っ向から斬りかかり・・・
躱されるも・・・
またも手首返しからの・・・
水平斬りを仕掛ける・・・
福本名人。
この真っ向(あるいは右袈裟)→水平斬りの連続技は、本作の擬斗を担当する上野隆三翁のみならず、東映剣会の殺陣師の皆さんがこぞって用いる鉄板の振り付けですが、一番キレ味鋭くやってのけるのはやはり剣会の中でも福本名人ですね。
だいたいどの役者さんも(上手い下手の差はあるにせよ)切っ先を自身の左手から右手まで一八〇度、つまり半円を描くように水平斬りを仕掛けるものですが、福本名人は自身の後方、二七〇度まで刀を振り抜きます。上半身の捻りが効いているのか、肩が柔らかいのか・・・。また一太刀のスピードも余人に比べて群を抜いてますから、もうとにかくカッコイイ!
清兵衛が口封じのために叶屋の番頭・才次(下元年世)に匕首で刺されるシーンを挟み、小船氏に続いて長七郎に斬りかかるも・・・
左手で柄を取られて・・・
押さえこまれ・・・
柄頭を腹に当てられ倒された小船氏に続いて・・・
胸のあたりに柄頭を叩き込まれ・・・
しばし硬直・・・
地面に倒れ込む福本名人でした。
このお話では大和田の腹心役に木谷邦臣氏もキャスティングされており、まさに剣会のツートップ揃い踏み。見どころ満載です。
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